研究課題/領域番号 |
24390402
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆史 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (20381171)
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研究分担者 |
丸山 征郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20082282)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 集中治療医学 / 敗血症 / ショック / DAMPs |
研究概要 |
HMGB1 (high mobility group box 1 protein) は敗血症における“死の因子”として注目を集めている。しかしながら、HMGB1が単体で炎症や凝固を活性化する作用は強くなく、エンドトキシン非存在下においては、HMGB1を大量に投与しても致死的でないことから、エンドトキシン血症の病態においてのみ病的に働く、未知のHMGB1の作用点があるだろうと推察された。本研究では、我々の作業仮説【エンドトキシン血症⇒HMGB1上昇⇒バソプレシン低下⇒ショック】が、敗血症性ショックの基盤となっている可能性について検証する。 平成24年度は、HMGB1が血漿バソプレシン値の低下とショックの誘発因子となりうるか、ラットを用いて検討したところ、エンドトキシンのみを投与したラットと比較して、エンドトキシン投与後にHMGB1を投与したラットでは、平均血圧の低下の程度が約22%大きく、HMGB1がショックの誘発因子となっている可能性が示唆された。また、HMGB1を投与したラットは血圧値が低いにも関わらず、血漿バソプレシン値の上昇が小さく、ショックに伴うバソプレシン値の上昇をHMGB1が抑制している可能性が示唆された。 この結果を踏まえ、平成25年度は、HMGB1を抑制すればバソプレシン欠乏性エンドトキシンショックを防ぐことができるか検証した。HMGB1を抑制する薬剤としては、遺伝子組換え型トロンボモジュリン製剤(rTM)を用いた。rTMを投与したラットは、HMGB1投与に伴うバソプレシン欠乏状態が軽い傾向にあったが、有意な差ではなかった。また、エンドトキシン投与に伴う血圧低下をHMGB1は遷延化する傾向にあり、rTMはそれを軽減する傾向を示したが、こちらも有意差を認めなかった。平成26年度は、HMGB1ヘテロ欠損マウスを使用し、遺伝学的アプローチで解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回の検討では、エンドトキシンに対する反応性の個体差が予想以上に大きく、血圧値で有意差を検出するに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はアプローチの方法を修正し、HMGB1ヘテロ欠損マウスを用いることで、バソプレシン欠乏性ショックの病態におけるHMGB1の重要性を遺伝学的に検討する予定である。現在、HMGB1ヘテロ欠損マウスの繁殖に成功し、実験準備は整っている。
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