研究課題
HMGB1は敗血症における“死の因子”として注目を集めている。本研究では、作業仮説【エンドトキシン血症⇒HMGB1上昇⇒バソプレシン低下⇒ショック】が、敗血症性ショックの基盤となっている可能性について検証した。HMGB1を単体で投与したラットは血圧が低下することもなく、バソプレシン値の上昇も認められなかったが、エンドトキシンを単体で投与したラットは血圧が低下し、バソプレシン値の上昇を認めた。エンドトキシンとHMGB1の両者を投与したラットでは、血圧が低下しているにも関わらず、バソプレシン値が低く、HMGB1がバソプレシン分泌を抑制している可能性が示唆された。腎臓の組織検査においては、HMGB1を投与したラットでは、バソプレシンのターゲットである集合管上皮細胞のアクアポリン2の発現が低下しており、HMGB1がバソプレシン低下を引き起こしていることを示す間接的証拠と考えられた。次に、エンドトキシン血症におけるHMGB1の役割を解析するため、HMGB1欠損マウスを解析した。HMGB1ホモ欠損マウスは生後間もなく死亡してしまうため、本実験ではヘテロ欠損マウスを用いた。HMGB1ヘテロ欠損マウスは、ベースラインでのHMGB1の発現が低下しているものの、エンドトキシン血症誘発後にはHMGB1の発現が誘導され、野生型と同程度のエンドトキシンショックの病態を示した。ヘテロ欠損マウスを用いてHMGB1の役割を詳細に検討することは困難だと考えられた。本研究の過程で、HMGB1の酸化還元状態がHMGB1の活性に影響していることが新たに判明した。HMGB1単体では活性が弱い場合があること、HMGB1の血中濃度が高くても重症とは限らないこと、などと関係していると考えられる。今後、HMGB1の酸化還元状態別にサブタイプを分けて解析する必要があると考えられ、また、効果的な治療法を開発するうえでも、酸化還元状態別にターゲッティングする必要があると考えられた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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