研究課題/領域番号 |
24390403
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
佐和 貞治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10206013)
|
研究分担者 |
森山 潔 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296717)
上野 博司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20381965)
倉橋 清泰 横浜市立大学, 大学病院, 准教授 (50234539)
天谷 文昌 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60347466)
橋本 壮志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60515279)
松山 広樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (80515289)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 重症肺炎 / 緑膿菌 / V抗原 / 3型分泌システム / 敗血症 / 抗体価 |
研究実績の概要 |
重症肺炎や敗血症の高頻度起炎菌である病原性グラム陰性細菌の多くが多剤耐性化し、集中治療医学の現場において、免疫不全患者や高齢者に対して致死的な感染を引き起こしている。一方、近年、多くのグラム陰性菌において菌種間で極めて相同性の高い毒素分泌メカニズムであるⅢ型分泌システムが発見され、主要な病原性に関わっていることが解明されてきた。さらに、Ⅲ型分泌システムを抑制できる標的としてⅤ抗原とその相同体が発見され、欧米では緑膿菌やエルシニア菌感染に対するそれらを標的とした免疫療法の開発が進められている。本研究では、各菌種のⅤ抗原とその相同体に対する血清抗体価測定システムを構築し、感染罹患・重症化等との相関を見る血清疫学調査を実施し、従来の抗菌薬に頼らない新しい免疫療法の開発を導くことを目的とした。 患者約200名での血清における緑膿菌を始めとする抗Ⅴ抗原(とその相同体の)抗体価をや測定した結果、個人によって異なる抗体を持つことが示された。特に、緑膿菌V抗原においては、50歳以上お高齢者において、高い抗体価が認められた。高い抗体価を持つ患者血清からガンマグロブリン分画を抽出して、マウス緑膿菌肺炎モデルにおいて、そのグロブリン投与の予防効果を調べた結果、抗体価との相関が得られた。以上の結果から、多剤耐性菌の発症が院内で認められた場合や、重篤な感染症が発生した場合に、予防的に重症患者や免疫不全患者には受動免疫療法を与えることでV抗原抗体価を上昇させることにより、特定菌に対する免疫力を選択的に高め、院内感染が集団化しないように臨床的に予防処置が取れることや、感染患者がさらに重症化しないように治療抗体を投与することに関して、臨床応用を進める上での動物実験レベルでの検証が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した遺伝子組み換えV抗原タンパク作成、抗体価測定システムの構築、患者血清における抗体価の測定等の予定を順調に終了した。高い抗体価が得られた患者血清からガンマグロブリンを抽出して、動物肺炎モデルでガンマグロブリンの予防効果を判定する実験に少し遅れが生じたため、平成27年度に延長して実験を行なう。
|
今後の研究の推進方策 |
動物実験に属く、生化学的分析と統計解析について少し遅れが生じているが、ほぼすべての予定した研究は終了しており、若干の検証を含めた追加実験を残している。それらを本年度中にまとめあげる予定である。未使用額は、ついかで必要となったサイトカインアッセイキットの購入に使用する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
一部の抗体価の特異的な結果により、若干の追加実験が必要となったために、次年度にそのための繰越を確保した。
|
次年度使用額の使用計画 |
PcrV抗体価の高い血清より抽出したガンマグロブリンに保護効果が認められるかどうかについて、致死量の緑膿菌を肺感染したマウスにガンマグロブリンを予防投与して、肺傷害、死亡率、サイトカイン産生等が抑制されるかどうかについて検討を加える。
|