研究課題/領域番号 |
24390408
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
高野 吉郎 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (90126425)
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研究分担者 |
田畑 純 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (20243248)
馬場 麻人 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (90251545)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔解剖学 / 硬組織 |
研究概要 |
従来、エナメル基質の脱却は大部分がエナメル芽細胞のエンドサイトーシスに拠るとされてきたが、実験的証明はない。分泌直後のアメロゲニンC-末端の分解は、有機アニオンの性質を持つ断片を大量に生じるが、形成期エナメル芽細胞によって速やかに吸収されるため、生化学的には検出できないという。我々はこのアメロゲニンC末断片の吸収に、腎尿細管型有機アニオン輸送体(OAT)を介す、エンドサイトーシスに拠らない吸収機構が働いている可能性を提唱し、本研究でその検証を試みることとした。 研究初年度は先ずOAT1,OAT2,0AT3に対する特異抗体を用いてラット切歯、臼歯におけるそれらの歯胚内局在を免疫組織化学的に検証し、1.OAT2は基質形成開始とともにエナメル芽細胞のトームス突起に発現し、基質形成完了とともに急速に消退する、2.OAT1は成熟期になって初めてRAの波状縁に発現し、RA-SAの周期変化に一致して発現と消退を繰り返す、3.OAT3はエナメル芽細胞は陰性で中間層細胞に局在することを確認した。次いで蛍光有機アニオンであるLucifer Yellow(LY)を静注してその動態を追跡したところ、LYが投与後すみやかに形成期エナメル芽細胞のサイトゾルとエナメル質へ移行すること、サイトゾルへの移行がエンドサイトーシスに拠らないことが確認された。また、アメロゲニン免疫染色では基質形成期後期と成熟期早期エナメル芽細胞のサイトゾルに免疫反応が確認され、更にユビキチンとプロテアゾームの免疫活性も確認された。そこでラットにプロテアゾーム阻害剤を投与した後にアメロゲニン免疫染色を行ったところ、エナメル芽細胞サイトゾルのアメロゲニン免疫反応が有意に増強した。 これらの所見はエナメル芽細胞のサイトゾルにアメロゲニン分解システムが存在することを意味しており、エナメル芽細胞がエンドサイトーシスと非エンドサイトーシス型の基質吸収・脱却機構を具備している可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立案した5つの実験計画のうち1.有機アニオン輸送体の歯胚内免疫局在、2.アメロゲニンおよび3.ユビキチン1プロテアゾームのエナメル芽細胞サイトゾル内免疫局在、4.エナメル器内における有機アニオンの動態の可視化実験は、それぞれほぼ計画通りに進行し、その成果を複数の国内外の学会で発表した。また、国際誌にも1編の論文が掲載された。当初予定していた歯胚培養系を用いた検証実験は研究2年次へ先送りとなった。
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今後の研究の推進方策 |
歯胚の器官培養系に有機アニオン輸送体阻害剤、プロテアゾーム阻害剤等を作用させ、それらがナメル質基質の脱却や石灰化に及ぼす影響を精査して、エンドサイトーシスに依らないエナメルタンパク脱却機構の存在を証明する。サイトゾル蛋白分解系がエナメル質の高度石灰化に果たす機能的意義を実験的に検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度、購入予定物品目に計上していた回転式ミクロトームの購入を取り止めたため、年度繰越金が生じた。初年度に購入した多目的蛍光顕微鏡の機能を高めるためのアプリケーションソフトが高額であるため、繰越した研究費はおもにそれらソフトウエアの購入に充てる。これによりデータ解析の精度が各段に高まることが期待される。
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