研究課題/領域番号 |
24390413
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大谷 啓一 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10126211)
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研究分担者 |
青木 和広 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (40272603)
高橋 真理子 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 技術職員 (90334440)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | TNF / 骨形成 / ペプチドアンタゴニスト / BMP |
研究概要 |
本研究はTNF受容体とそれに連なる情報伝達系を創薬標的として,TNF受容体拮抗薬2種類,Ikk-β阻害薬1種類の効果に関して基礎的な検討を行い、歯周病の骨吸収など炎症性骨疾患に臨床応用可能な薬物創生基盤を築くことを目的とする。 本年はTNFとTNF受容体の結合を阻害する環状ペプチドとして創生されたW9ペプチドを主体として検討を行った。まずBMPの骨形成誘導作用におけるW9ペプチドの効果をin vitroの骨形成系にて検討を行った。マウス骨髄細胞を石灰化培地にて培養して誘導される石灰化結節をBMP、W9ペプチドそれぞれ独立に増加させた。さらに、BMP、W9ペプチドを併用すると石灰化結節はさらに増加した。このことからW9ペプチドは単独でも骨形成を促進する作用を有し、さらにBMPの骨形成作用に協力することが明らかとなった。 マウス背部筋肉内にBMPをコラーゲン担体に浸して埋め込むと異所性骨形成が生じる。背部皮下にW9ペプチドをBMPと混入して埋め込んだところ、BMP単独よりも大きな異所性骨が形成された。また骨形成過程を組織学的に観察したところ、皮質骨を含めた外層の骨の形成が促進していた。また骨表層には大型の骨芽細胞が並んで存在しており、骨形成が高まっていることが確かめられた。このW9ペプチドの骨形成促進作用は、TNF欠損マウスやTNF受容体欠損マウスにおいても認められたことから、W9ペプチドのTNFとTNF受容体の結合阻害作用とは別の機序で発現している可能性が考えられた。 これらの研究成果からTNFとTNF受容体の結合を阻害する環状ペプチドW9が骨形成能力を有することが明らかとなった。TNFとTNF受容体は炎症に伴う骨破壊、すなわち破骨細胞形成に促進的に作用していることが知られているが、骨形成作用と直接関連することはほとんど知られていない。今回の観察からW9ペプチドにTNFへの作用とは無関係に骨形成促進作用があるように思えることから、そのメカニズムの解明が必要になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初W9ペプチド以外にIkk-β阻害薬AVEI627による骨吸収抑制活性と抗炎症作用について詳細に検討する予定であったが、in vivo研究の結果解析に時間かかり取り組むのが遅れている。しかしAVEI627による研究はすでに予備的検索を終了しているので、計画全体としては概ね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
W9ペプチドによる骨形成作用が明確になったので、作用機序の解明を推進して新たな創薬標的の発見に努める。また新規の薬物候補についても今後新たに取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験装置(分光光度計や顕微鏡デジタルカメラ)、実験に必要な培養用の器具、薬品、実験動物を購入する資金の一部として使用する予定である。
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