研究課題
歯周病において、歯槽骨の吸収は歯の喪失を引き起こす。現在までに、歯周病に骨吸収関連遺伝子が関与している可能性を示す患者由来の歯肉溝滲出液を用いた報告がなされてきた。そこで、我々は骨吸収関連遺伝子としてOPGの歯周病への関与を明らかにするため、OPG-/-マウスとRANKL遺伝子強発現マウス(RANKL Tg)の歯槽骨を解析した。各種マウス血清中の骨代謝マーカーを測定した。OPG-/-マウスはOPGが発現していないのでRANKL/OPG比は無限大に大きくなるが、RANKL TgマウスのRANKL/OPG比も正常マウスと比較して40倍近くに増大する。野生型マウス、OPG-/-マウス、RANKL TgマウスのRANKL/OPG比は、骨吸収マーカーである血清TRAP5b活性と相関した。次にそれぞれのマウスの歯槽骨における破骨細胞の出現とOPGタンパク質の発現について検討した。その結果、OPG-/-マウスのみ歯槽骨が多孔質化し、骨の内部と表面で破骨細胞が顕著に増加した。一方、野生型マウスやRANKL Tgマウスの歯槽骨は多孔質化せず、OPG陽性の骨細胞が明瞭に認められた。これらのマウスにおける大腿骨皮質骨の多孔質化とOPGの発現様式も歯槽骨と同様であった。しかしながら、大腿骨海綿骨におけるOPG陽性骨細胞はほとんど認められなかった。以上の結果より、骨細胞が産生するOPGが皮質骨や歯槽骨の維持に重要な役割を果たしていることが示された。また、OPGの発現低下は歯周病の進行にも関与する可能性が示唆される。以上の結果をまとめると、OPG-/-マウスの歯槽骨吸収について解析した結果、OPG遺伝子の欠損によって著しい歯槽骨吸収が惹起されることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子欠損マウスを用いた実験結果から、骨細胞が産生するOPGが皮質骨や歯槽骨の維持に重要な役割を果たしていることが示された。また、OPGの発現低下は歯周病の進行に重要であることが示唆され、RANKL中和抗体の歯槽骨吸収に対する抑制効果を明らかにすることができた。
今回計画した研究においては、破骨細胞から骨芽細胞へのRANKLのリバースシグナルを解明し、新しい骨形成促進シグナルを明らかにすることである。そして、これらの基礎的研究成果を基にして、歯槽骨吸収の予防及び残存する歯槽骨を保存する薬剤の開発を目指す。
平成25年度の研究遂行において、直接研究費次年度使用額(186,696円)が生じたが、試薬類の大量購入により定価より安い金額で購入できたためである。最終年度の研究において、本研究計画の最終目標である骨形成の新しい信号を明らかにする実験に使用する。平成26年度の研究遂行において、平成25年度の未使用分と合わせて、最終年度の研究計画の目標である骨形成の新しい信号を明らかにする分子生物学的実験および成果発表に用いる予定である。
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