研究課題
破骨細胞分化因子であるRANKLが1998年に発見されてから15年、破骨細胞の分化誘導に関わる信号伝達が明らかとされてきた。その過程で、RANKL信号伝達が破骨細胞のみならず、骨芽細胞の分化を制御している可能性を示す実験結果が得られてきた。W9 (WP9QY)はRANKやTNFレセプターと相同性を有する9個のアミノ酸から構成される環状ペプチドであり、W9ペプチドは、TNFの作用を阻害する他、RANKLと結合することにより、破骨細胞の分化を阻害し、卵巣摘出モデルにおける骨量減少を防止する。正常マウス骨髄細胞におけるRANKL誘導性の破骨細胞形成に対してW9はTRAP陽性多核破骨細胞形成を濃度依存的に抑制した。W9 (100μM)添加群において、TRAP陽性多核細胞形成が完全に阻害されたが、ALP陽性の骨芽細胞は多数出現した。W9 (200μM)添加群においては、ALP陽性骨芽細胞からなるNodule形成が著明に認められた。正常マウス由来の骨芽細胞上では、ビタミンDやPTH の存在下で破骨細胞が形成され、W9ペプチドは破骨細胞分化を阻害すると共にALP陽性の骨芽細胞の分化を促進した。BMP-2やPTHによるALP陽性の骨芽細胞誘導に対してもW9ペプチドは促進作用を示した。一方、RANKL欠損マウス由来の骨芽細胞上の共存培養系においては、ビタミンDやPTHなどの存在下でも破骨細胞の誘導は認められなかった。また、 RANKL欠損マウスの骨芽細胞は正常マウス骨芽細胞と比較してALP活性が弱く、W9、BMP-2、PTHによるALP陽性の骨芽細胞誘導活性も弱かった。RANKLに結合するW9ペプチドは、RANKシグナルを阻害することにより破骨細胞分化を抑制する。さらに、W9ペプチドは骨芽細胞表面のRANKLに結合し骨芽細胞分化を誘導するものと考えられる。RANKL-RANKシグナルは、骨吸収のみならず、骨芽細胞による骨形成にも重要な役割を有する可能性がある。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Bone Miner. Metab.
巻: 33 ページ: in press
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 1-8
10.1038/srep04493.