研究課題
口腔内は常に創傷・温熱刺激・細菌・ウィルス感染・異物接触などの危険に曝されており、難治性の口腔粘膜炎症を引き起こすことが多い。このような口腔内の慢性炎症は、ときとして口腔前がん病変(白板症・紅板症・扁平苔癬)、さらには発がんの原因になることもあり、その病態メカニズムを明らかにすることは重要である。最近の研究により、様々な炎症性疾患に共通に認められる組織、細胞内現象として、小胞体ストレスが注目されている。そこで本研究では、in vitroおよびin vivo炎症モデル実験系を用いて、炎症病態に関わる主要な細胞の一つであるマクロファージの分化・活性化・アポトーシスの分子機構を、小胞体ストレスシグナルの観点から解明し、炎症性疾患の克服に繋げることを目的とする。1)In vivo急性・慢性炎症疾患マウスモデルの確立とマクロファージ特異的ノックアウトマウスを用いた検証初年度のin vitro実験系によって明らかにされた、マクロファージの分化・機能・アポトーシスと小胞体ストレスシグナルの関係をより生理的に検討するため、マウスを用いた炎症モデル実験系を確立し、野生型マウスとマクロファージ特異的ASK1・Derlin-1ノックアウトマウスの比較において次の点について評価し、一定の結果を得た。「マウス表皮創傷治癒モデル」「口腔粘膜創傷治癒モデル」「酢酸滴下による口腔粘膜炎症誘発モデル」「急性炎症としての敗血症モデル」
2: おおむね順調に進展している
本研究の目標は、炎症性疾患の克服に向けて、小胞体ストレスの可視化を、特にマクロファージで可能にすることである。平成24年度の成果、「実際に可視化に成功するとともに、同時に初代培養マクロファージの培養にも成功」に引き続き、平成25年度はノックアウトマウスを用いた検証を実施し、一定の結果を得ることが出来た。これらの研究実施内容は、当初の予定していたとおりであり、研究目標達成に向け、計画に従って順調に進展している。
最終年度である平成26年度は、下記研究内容について推進する。「小胞体ストレス緩和化合物・アポトーシス阻害剤によるマウス病態改善」これまでの研究により、小胞体ストレスによってDerlin-1が発現誘導され、ERAD機能の上昇により、小胞体品質管理機構が保たれることが報告されている。そこで、Derlin-1プロモータ領域の下流でGFPを発現させる系を構築し、低分子化合物をin cellレベルでスクリーニングする。これにより得られたシード化合物をリード化合物へ改変する。一方、我々は既にASK1活性阻害剤を得ている。これら両化合物の、マクロファージ表現型への効果を検証し、マウス炎症モデル疾患を寛解させうる化合物の取得を目指す。
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