研究課題/領域番号 |
24390420
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
石橋 浩晃 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (90254630)
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研究分担者 |
鬼丸 満穂 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00380626)
中山 英二 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (60172467)
杉本 直俊 金沢大学, 医学系, 准教授 (80272954)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 悪性新生物 / 血管新生 / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
当該年度における研究成果に関して実験的腫瘍組織への遺伝子導入法や経路,すなわちin vivoにおける精密な導入導入条件の確立が重要である.そこで,ヌードマウスの背部皮下に実験的腫瘍を作成すると同時に,作成した腫瘍組織に対しての導入条件を確立した. (1)癌の血管新生に関する責任分子の選択:本研究を展開するに際し,口腔癌における血管新生機序に関わる責任因子,すなわち標的となりうる血管新生因子を明らかにして,本戦略における標的分子として選択しなければならない.そのためには,扁平上皮癌細胞を中心に培養口腔癌細胞に広範に発現している血管新生因子を検索した.また,それらの誘導を制御するサイトカインや増殖因子などの液性因子,あるいは低酸素,低栄養などの微小環境を同定して,標的血管新生因子の発現誘導を確認するとともに,関連転写因子の動態を解析し,おとり遺伝子により標的因子として,その活性を抑制すべき転写因子を解明した. (2)HVJ-リポソーム法を用いたおとり遺伝子導入による,血管新生因子発現の抑制効果の解析:培養口腔癌細胞にHVJ-リポソーム法を用いておとり遺伝子を導入し,サイトカインや増殖因子による刺激,あるいは低酸素や低栄養で培養し,血管新生因子群の発現に関する抑制効果を検索する.また,本遺伝子治療法の効果を動物モデルによる実験的腫瘍に与える抗腫瘍効果で検証し,臨床応用に際しての基礎的資料を蓄積した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは当該課題にて従来の合成リポソ-ムに安定的におとり遺伝子を封入する方法を確立した.一方で受精鶏卵を使用し,HVの大量培養法を確立している.培養したHVJに紫外線を照射して,ゲノムRNAを断片化し失活させ,HVJ ウイルスの外套蛋白の融合能のみを保存させたHVJ particleを調製した.このHVJ particlesとおとり遺伝子を含有するリポソ-ムを厳重な温度制御により融合させ,おとり遺伝子含有HVJ-リポソ-ムを作成した.このHVJ-リポソ-ムを培養液に添加し,さらに詳細な温度制御により培養癌細胞と膜癒合により封入されたおとり遺伝子を培養癌細胞に導入させることを可能にした.本法にておとり遺伝子を導入すると,おとり単独添加群や従来のリポソーム法に比較して大量の遺伝子が導入できることが観察された また,FITC標識したおとり遺伝子をHVJ-リポソ-ム法で培養口腔扁平上皮癌細胞により作成した実験的腫瘍に遺伝子導入し,フロ-サイトメトリ-にて導入効率を確認した.対照群として遺伝子単味での遺伝子導入群あるいは従来のリポソーム法にて導入した細胞を用いて,各群の導入効率を比較検討した.導入後6時間にて細胞内のFITC励起を観察し,蛍光強度を導入効率として比較検討した.おとり遺伝子単独群(培養液添加)や,従来のリポソーム法に比較して,HVJ-リポソーム法にて遺伝子導入した細胞は蛍光励起が右方にシフトしており,100%の細胞に導入が可能であった.
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今後の研究の推進方策 |
今後はHVJ-リポソ-ムによるおとり遺伝子戦略の臨床試験にむけて,副作用や臓器障害などの観察,およびその対策に関する知見を集積し,臨床応用への最終準備を行う.本戦略による副作用の観察は以下の2点が重要である.すなわち(1)HVJ-リポソ-ム法に使用するHVJ(センダイウイルス)の為害作用,(2)おとり遺伝子導入による特定転写因子抑制による為害作用.この2点について,以下の方法による副作用発現の有無,あるいはその対策法の確立に関する検討を行う.HVJ(センダイウイルス)は現在までヒトへの病原性に関する報告はない,しかも,本法においては紫外線照射によりウイルス活性を失活させている.すなわち紫外線照射前のHVJと,照射後のHVJの電子顕微鏡学的所見では,照射前では正常なゲノムRNAが観察されるが,照射後ではRNAがスメアーになって,失活している事が推測される.また, HVJ の外套蛋白の融合能の保存が重用であるが,紫外線照射前後で外套膜の形態学的変化はみられず,融合能が十分に保存・維持されていることが示唆された.このように既知の知見ではHVJ-リポソーム法は極めて安全なウイルスベクターによる遺伝子導入法であるが,臨床応用に展開する前に当該年度において副作用の有無について肉眼的および組織学的に観察する. また,本法における標的転写因子の抑制による生体の恒常性破綻による副作用の有無について,これまでに検索した転写因子を標的として,おとり遺伝子導入を行い,同様に副作用について病理学的に資料を収集する.
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子導入に使用する合成二本鎖オリゴヌクレオチドの生成について,研究分担者の研究機関内における合成が可能となり,予定支出が減額となった,また,動物実験において,動物実験センターが充実している研究分担者の所属機関での実験を施行したが,良好な遺伝子導入効率の策定が順調で費用を減額できた.
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次年度使用額の使用計画 |
合成二本鎖オリゴヌクレオチドは機関内作成とし,必要な補助試薬での予算執行を行う.動物実験の結果を解析するための観察装置を購入する.
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