研究課題/領域番号 |
24390425
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
恵比須 繁之 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 理事 副学長 (50116000)
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研究分担者 |
野杁 由一郎 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50218286)
木ノ本 喜史 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 招へい教員 (10252694)
山口 幹代 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (30523089)
朝日 陽子 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (50456943)
高橋 雄介 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60397693)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細菌 / デンタルバイオフィルム / in situ / 16S rRNA遺伝子解析 / 抗バイオフィルム薬 / ハイドロキシアパタイト / Fish法 / 共焦点レーザー顕微鏡 |
研究概要 |
本研究は、ヒトの口腔で実験的にデンタルバイオフィルム(DB)を形成させるモデルを開発し、DBの形成メカニズムやその制御・抑制法を検討することを目的としている。24年度は口腔内装置を用いてハイドロキシアパタイト(HA)上でDBを形成させるモデルを開発した。25年度は、確立したモデルを用いて、DBの形成メカニズムの一端を明らかにするため、DBの定量的解析、微細形態学的検索ならびに遺伝子学的定性解析(メタゲノム解析)を行った。 その結果、DBは、12, 48, 72時間を変曲点として2相性のシグモイドカーブを描いて成長・増殖することが明らかとなった。そして、バイオフィルム中の細菌数は72時間後には1x10の11乗/平方cmに達することを明らかにした。形態的には72-96時間後には球菌や糸状菌が優位に観察され、高度な菌体外マトリックス形成様構造物がみられた。3次元観察においては、24時間以降はわずかながら死菌が観察され、時間経過とともに、細菌数に相関して厚みが増加していた。 メタゲノム解析の結果、phylum(門)レベルでは、BacteroidetesとFusobacteriaが経時的に増加傾向を示したが、Firmicutesは減少傾向を示した。今回は、手技の確立を考量して遺伝子の抽出方法を2つの方法で行ったが、バイオフィルムからダイレクトにDNAを抽出する方法と、ディスクごと超音波機器にかけて抽出する方法でデータに相違がみられたため、現在リアルタイムPCRにて、どちらの方法が再現性が高いかの確認実験を行っているところである。その結果が明らかになった時点で、貯蔵している大容量のサンプルのメタゲノム解析を行い、デンタルバイオフィルムの経時的な細菌叢の変化を遺伝子工学的手法で明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初にたてた研究実施計画に従って、in situ デンタルバイオフィルムモデルの作製と評価を行った。研究は概ね順調に進展しているが、メタゲノム解析では、DNA の抽出方法によってデータに若干の相違がみられたため、大容量の試料の解析に供する前に手技の確立のための追試を行っているところである。試料はすでに収集しており、手技が確立され次第、解析を行えば、時間的には予定通り本年度には研究を終了できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ーin situ バイオフィルムモデルを用いたバイオフィルム抑制法の検討ーについては,デンタルバイオフィルムモデルの評価結果に応じて再度研究内容を再検討するつもりである。ボランティアの個々の生活環境や口腔環境あるいは生活習慣等の条件設定を綿密に行はないと、メタゲノムの解析結果は環境因子に大きく影響を受ける可能性があると思われる。 新規のバイオフィルムの抑制法や制御法の開発の可能性について検討する予定であるが、抑制法の確立までこぎつけることは困難と考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、メタゲノム解析の実験手技の確立を目指して、試料の調整方法について確認実験を行っている。本実験は、解析した結果の信頼性と再現性の向上のために行っているものであり、ゲノム解析自体は現状でも実施可能である。 25年度当初に予定していた手法で実験を遂行することは可能であったが、より正確で確実なデータを得るための手技を導入した。そのため、既に収集し貯蔵中の大容量試料の、外注遺伝子解析が遅れてしまい、準備していた資金が残金として発生した。 4、5月中にメタゲノム解析の実験手技を確立し外注予定であるため、本来の本年度の研究計画と並行して研究は遂行することは可能である。したがって、最終年度である本年度中に、デンタルバイオフィルム中の細菌叢の経時的な遺伝子学的解析はすべて終了する見込みであり、具体的には6月ごろに外注委託して10-11月頃にデータ解析を終了する予定である。
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