研究課題/領域番号 |
24390426
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤峰 昭文 九州大学, 歯学研究院, 教授 (00117053)
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研究分担者 |
前田 英史 九州大学, 大学病院, 講師 (10284514)
和田 尚久 九州大学, 大学病院, 講師 (60380466)
門野内 聡 九州大学, 歯学研究院, 助教 (30609558)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | iPS細胞 / ヒト歯根膜細胞 / 神経堤細胞 |
研究概要 |
本研究では、ヒト歯根膜細胞由来の人工多能性細胞(iPS細胞)を作製し、その特性解析、プライマリーの歯根膜細胞との相互作用や分化能解析、そして動物を用いた歯の再植実験モデルへのiPS細胞移植による歯根膜組織再生について検討することを目的とした。 そこで、当初の計画に従い、プライマリーのヒト歯根膜細胞へNanog, Lin28, Oct4 Sox2の遺伝子をコードしたMinicircleを操作手順に従い、iPS細胞の樹立を数回試みた。その結果、微少なコロニー形成を認めるも、成長せず、その原因について明らかにすることができなかった。 したがって、京都大学の山中教授らが作製したiPS細胞を用いて、まず歯根膜細胞の起源である神経堤細胞への分化誘導を行うことに、計画を修正した。iPS細胞のコロニーを個々に分散し、MEF細胞の培養上清と共に培養することによって、iPSの増殖を行った。約50%程度に増殖した細胞に、TGF-betaシグナルの抑制剤ならびにBMP活性の分泌拮抗薬として働くNogginを添加した培地で培養し、増殖を促進した。その後、海馬細胞や中枢神経系の神経細胞の培養用無血清培地にて培養することによって、約半月をかけて神経堤細胞分化誘導を行った。 この分化誘導した細胞は、ES細胞マーカーであるNanogならびにOCT4遺伝子を発現しており、さらに神経堤細胞マーカーであるNestin, p75NTR, SLUG, SOX10遺伝子を発現することが明らかになった。さらに免疫細胞学的染色により、誘導された細胞は、中枢神経マーカーであるPAX6を発現する細胞集団の中にp75NTR発現細胞のコロニーが形成されていた。 以上の結果から、iPS細胞からの神経堤細胞分化に成功したと考えられる。歯根膜組織を含めた歯を構成する間葉系細胞は、神経堤細胞に由来することから、これらの細胞を用いることで、喪失した歯根膜組織の再生のみならず、歯の再生の糸口にもなり得るものであると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌遺伝子やウィルスを使用しない、Nanog,Lin28,Oct4,Sox2の遺伝子を用いた、ヒト歯根膜細胞由来のiPS細胞を作製すること計画していたが、有効な細胞が得られなかった。そこで、本研究では本来、作製したips細胞を神経堤細胞分化誘導し、その細胞を用いて歯根膜細胞の再生への有効性について検証することを目的にあげていたことから、京都大学の山中教授のグループによって作製されたips細胞を用いることによって、神経堤細胞分化を誘導することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
ips細胞由来の神経堤細胞を用いて、歯根膜細胞分化誘導実験に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)神経堤細胞様細胞の歯根膜線維芽細胞および骨芽細胞/セメント芽細胞への分化能の解析 (2)ips細胞または神経堤細胞様細胞とプライマリー歯根膜細胞との相互作用の解析 (3)歯根膜欠損歯牙再植実験モデルの作製 以上を計画している。
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