研究実績の概要 |
京大で作製されたヒト皮膚繊維芽細胞由来のiPS細胞を用いて、歯周組織の起源である神経堤細胞様細胞へ誘導し、この細胞を、初代ヒト歯根膜細胞を培養し、細胞のみを剥離して細胞外基質がコートされたディッシュ上で培養した。コントロールのディッシュには、誘導した神経堤細胞様細胞の接着用に使用している、FibronectinおよびLaminでコートしたものを用いた。その結果、歯根膜細胞外基質上で培養した神経堤細胞様細胞は、歯根膜細胞に特徴的な遺伝子である、ALP, alpha-Smooth muscle actin, Collagen 1 & 12, EGF receptor, Fibrillin 1, Osteoprotegerin, Osteopontin, PLAP 1, Periostinを、コントロールディッシュと比較して、有意に発現を促進した。中でもPLAP 1の発現はコントロールと比べて、約150倍程度に上昇した。以上の結果より、神経堤細胞様細胞の歯根膜細胞分化誘導には、初代歯根膜細胞の細胞外基質が有効であることが示唆された。 次に、ヌードラットの下顎頬側歯槽骨を削除し、歯根を露出させた部位に、足場材であるゼルフォームとこの歯根膜様誘導細胞とを混和し移植した。4週間後に固定し、組織を観察した結果、ゼルフォーム単身と比較して、頬側の骨が顕著に再生した像が観察された。また一部では、歯根膜様の組織再生も認められた。 以上より、iPS細胞から歯根膜様細胞へ分化誘導した細胞は、歯根膜組織再生において有用な細胞源であることが明らかになった。
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