研究課題/領域番号 |
24390429
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
土谷 昌広 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (60372322)
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研究分担者 |
佐々木 啓一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30178644)
黒石 智誠 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30400261)
萩原 嘉廣 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90436139)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 顎関節症 / 索状硬結 / マクロファージ / IL-1 |
研究実績の概要 |
顎関節症に伴う慢性筋痛の多くは索状硬結の存在を特徴とするが,その発症メカニズムは不明であり,治療法も未だ確立されていない.近年,筋組織の治癒過程におけるマクロファージ(Mφ)の重要性が報告されている.そこで,慢性筋痛の新規治療開発を目的として,マウス咬筋部の疲労回復,および治癒過程におけるMφの役割と賦活化のメカニズムについて明らかとする.マウス(Balb/cマウス,オス,5週齢)を用い,その咬筋部に咀嚼様運動に伴う筋疲労を誘導し,組織内における貪食性マクロファージの動態について明らかとする リポゾーム封入クロドロネート(Clo-Lip)の静脈内投与(0.2ml/mouse)により24時間~4日目まで組織内のMφが枯渇する.Clo-Lip投与による強制歩行時の運動持続量が有意な減少と,IL-1βの発現量低下について示された.IL1欠損マウス(αとβのダブルノックアウト)において,IL-6誘導の障害(運動後の誘導の遅れ)と糖代謝異常についても確認が行われた.最後にこれらを発現する細胞がMφであるかどうかについてFACSおよび免疫組織学的に検討を行い、Mφ特異的抗体であるF4/80陽性細胞近縁でIL1βの陽性反応が組織学的に確認された。 結果,筋運動時におけるIL-1の機能的役割について,(1)運動時に筋組織のMφにおいて発現・誘導され,(2)オートクライン/パラクラインに筋組織に作用することで,(3)筋細胞レベルでのエネルギー確保に重要な作用を有することが明らかとなった. これらの作用はマウス咀嚼運動でも同様でも同様の結果が得られている.本年度の結果は,運動時のMφの筋機能維持における重要な役割を示す所見であり,軽度な筋組織外傷といえる咀嚼様運動に伴う筋疲労時に,疲労回復過程においてMφが必須な存在であることを示すものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の結果は,筋運動時におけるIL-1の発現細胞がMφであることを実証するものであり,その機能的役割については(1)運動時に筋組織の局在するMφにおいて発現・誘導され,(2)オートクライン/パラクラインに筋組織に作用することで,(3)筋細胞レベルでのエネルギー確保に重要な作用を有する可能性を示すものである.すなわち,運動時のMφの筋機能維持における重要な役割を示す所見であり,軽度な筋組織外傷といえる咀嚼様運動に伴う筋疲労時に,疲労回復過程においてMφが必須な存在であることを示すものである. Mφ枯渇による筋活動の抑制効果については,一般的な運動の実験モデルである強制歩行のみならず,咀嚼運動においても同様であることが明らかとしており,我々の仮説はかなり確実性の高いものと考えられる.また,IL-1ノックアウトマウスにおいてもMφ枯渇と同様の結果が得られており,運動時の筋組織内におけるIL-6産生が障害され,結果としてその経時的な筋活動量の減少を促し,その疲労耐性を低下させることが推察された.今後の我々の研究計画を進める上で,重要な指針を与える結果が本年度は得られたものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,IL-1によって誘導されるIL-6の発現についてもin vitroにおいて検討を行い,更なるメカニズムの解明を行っていく.またIL-1のαとβの発現の比較から,今まで同様のサイトカインとされていたものが,筋組織においては異なる作用を示すことが考えられる.今後,ヒトサンプルより筋衛星細胞をFACSなどを用いて回収し,運動時の筋組織内に対するIL-1の働きについて直接的な解析を行うこととする. また,本研究の目的である,筋障害から回復する上で有効な,それらの活用法についても検討を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスの繁殖に遅れが見られたため、使用動物数が予想より少なく、結果として実験に使用する消耗品なども少量となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
繁殖スペースも確保したため、最終年度に合わせて動物実験を進捗させることに問題は無いと考える。本年度に行ったそれ以外の実験の結果は非常に順調であり、計画が次々年度以降に遅れることはないものと思われる。
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