研究概要 |
外来刺激による骨吸収の一部は,破骨細胞の分化を促進させる主な因子であるReceptor Activator of NF-・B Ligand(RANKL)の発現が促進し,破骨細胞が活性化されることで引き起こされていると考えられている.我々はTNF Receptor-Associated Factor(TRAF)Familyの属する分子の中で,TRAF1が破骨細胞の分化を負に制御していることを報告している.これらの知見をもとにマウスおよびヒトにおいて保存されているTRAF1タンパクの配列の中でいくつかの抗原候補部位を含むペプチドを合成し,in vitroにおける破骨細胞の活性抑制効果を検討した.また,アルギニンに富むペプチドは細胞膜を透過し細胞内送達能があることが知られていることから,決定したTRAF1由来アミノ酸配列のC末端に,アルギニン11残基を付加したペプチドを合成した(T1およびT2).さらにコントロールとしてアルギニン11残基のみからなるペプチド(11R)を準備した.T1-FITCが,RAW264.7細胞の細胞質内に移行していることを確認した.また,T1で処理したRAW264.7細胞では,ペプチド未処理のRAW264.7細胞と比較して,可溶性RANKLにより誘導されたTRAP陽性多核巨細胞の出現数が有意に減少した.一方,11RおよびT2で処理したRAW264.7細胞では有意な影響を認めなかった.平成24年度の結果より,TRAF1由来ペプチドであるT1は,RAW264.7細胞の細胞質内へ取り込まれ,可溶性RANKLによるRAW264.7の破骨細胞様細胞への分化を抑制することが示された.
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