研究課題
基盤研究(B)
本研究では、新規転写因子エピプロフィン(Epiprofin, Epfn)の歯原性上皮細胞の増殖と分化、そして歯胚の組織発生過程での歯数制御における役割と作用機構の解明を目的としている。初年度の目標は、細胞実験を中心に研究を進めながら、WntシグナルのレポーターマウスであるBAT-Galマウス(Wntの活性化領域をbeta-Galで可視化するモデルマウス)とEpfn KOあるいはK5-Epfnとの交配、繁殖を行う事であったが、Epfn KOならびにK5-Epfnの繁殖が順調に進まなかったので、研究に用いるだけの十分なマウスの数を確保できなかった。このため、歯原性上皮細胞を用いた細胞実験を中心に研究を進めた。Epfn KOマウスでは、多数の過剰歯形成を認め、その組織学的解析から、上皮の分化阻害によって、未分化状態の歯原性上皮の断続的活性化が生じていることが示唆された。最近の論文報告で、上皮の活性化にWntシグナルが関与している事が分かっているため、Epfnがどの様にWntシグナルに作用しているのかを解析した。その結果、Canonical WntシグナルをモニターできるTOP flashベクターを歯原性上皮細胞に導入し、Epfn存在、非存在下でのTOP flashのレポーター活性を評価した。その結果、Epfnは歯原性上皮細胞において、Canonical Wntシグナルを活性化させることが明らかとなりました。一方、恒常的にWntシグナルを活性化させた状態でのEpfnの役割を検討した。恒常的にWntシグナルを活性化させるために、BIO(GSK3 beta阻害剤)を用いた。BIOは歯原性上皮細胞のCanonical Wntシグナルを強力に活性化した。興味深いことに,Epfnを強制発現させた細胞群では、BIOによって増強されたWnt活性が半減されていた。つまり、EpfnはWntシグナルの調節因子と働いていることが示唆された。このため、Epfn KOマウスでは、EpfnによるWntシグナルの負の制御が破綻しているため、歯原性上皮のWnt活性が持続し、その結果多数の過剰歯を形成し続ける事が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
WntシグナルのレポーターマウスとEpfn KOならびにK5-Epfnの掛け合わせは、マウスラインの繁殖能力の低下のため十分な数は得られなかった。しかしながら、細胞を用いた実験は、当初の計画以上に進展し、Epfnの歯原性上皮細胞における機能解明に直結する結果を得た。
WntシグナルのレポーターマウスとEpfn KOならびにK5-Epfnの掛け合わせは、継続して行っていく。同時に、細胞や歯胚の器官培養を用いた研究を取り入れ、Epfnの上皮に枝分かれ制御機構も検討することにより、Epfnによる歯数制御機構の解明を試みる。
細胞やEpfn KOやK5-Epfnの発生歯胚を用いた歯胚の器官培養を行い、マイクロアレーにて包括的な遺伝子プロファイルを行い、Epfnのターゲット分子や機能発揮に関する分子機構の解明を進める。
すべて 2012
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 422(4) ページ: 627-632
10.1016/j.bbrc.2012.05.039
Cell and Tissue Research
巻: 350(1) ページ: 95-107
10.1007/s00441-012-1459-8