研究概要 |
歯周病により失われた歯周組織の再生や、インプラント治療時の顎骨の骨造成には、適応症が限られていること、骨移植に伴う問題、さらに組織再生量の限界など、様々な問題が残されており、重度の歯周組織または顎骨欠損に対し応用可能な安全で効率的な再生療法の開発が求められている。これらの問題点を解決する新規治療法として本研究では、脂肪組織に由来する脱分化脂肪細胞(De-differentiated fatcells:DFAT)に着目し、効率的かつ予知性の高い理想的な組織再生を目指し、DFATを用いた細胞移植療法をベースとした次世代型歯周・顎骨再生療法の基盤確立を目指すことを目的としている。まず、硬組織形成能に関して、DFATは骨芽細胞への分化能を有しており、異所性の骨様組織の形成が既に報告されているが,in vivoでのDFATの骨欠損における硬組織形成能については十分に検討されていないため,歯周組織・骨組織欠損に対する応用に向けた基礎的研究として,ラットより分離・培養したDFAT(rDFAT)を用い,分化能の評価およびラット頭蓋骨欠損モデルを用いた骨形成に関する研究を行った。その結果、(1)分離培養したrDFATにおいて、PPARγ,Runx2/Cbfa1,Sox9およびBMPs受容体の遺伝子発現が認められ、さらに脂肪細胞および骨芽細胞への分化が確認された。(2)培養6日後、ALP,BSP,OCNの遺伝子発現およびALPactivityは無刺激群と比較して骨分化刺激群において上昇を認めた。(3)ScaffoldへのrDFAT播種後3日目と比較して,6日目に有意な細胞数の増加が認められた。(4)ラット骨欠損モデルにおいて、Scaffold+骨分化培地刺激rDFAT群では良好な骨欠損の閉鎖傾向を認めた。また、効率的な分化制御因子としてBMP-9に着目し刺激したところ、BMP-2と比較して骨関連遺伝子(Runx2, 0sterix, ALP, BSP)の発現の上昇を認めた。今後,BMP-9によるDFATの骨芽細胞様細胞への分化制御法を確立し、さらに検討していく予定である。
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