研究課題/領域番号 |
24390445
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮崎 隆 昭和大学, 歯学部, 教授 (40175617)
|
研究分担者 |
柴田 陽 昭和大学, 歯学部, 講師 (30327936)
山田 篤 昭和大学, 歯学部, 講師 (50407558)
美島 健二 昭和大学, 歯学部, 教授 (50275343)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | チタン / インプラント / 抗菌 / ハイドロキシアパタイト / コーティング |
研究概要 |
骨の無機成分であるHAをチタンインプラント表面にコーティング処理することにより,チタンインプラントの骨結合能は飛躍的に向上することが知られている.HAコーティングインプラントが早期骨結合獲得の観点において,チタン表面改質インプラントよりも優れていることは,基礎研究や臨床データから明らかである.しかしHAコーティングインプラントの長期的生存率の低さは,歯科領域のみで顕著であり,歯周病リスクの高い患者のケースでは,HAコーティングインプラントが純チタンインプラントにくらべてインプラント周囲炎の増悪が激しいことも報告されている.歯科インプラントのみで見られる著しいHAコーティングインプラントの生存率低下は,HAの口腔細菌に対する高感受性が大きな原因と考えられる.口腔細菌の多くは細胞膜表面がマイナスに帯電しており,材料表面を親水性に改質(マイナスに帯電)することにより,電気的反発力による細菌付着抑制(抗菌)効果が報告されている.材料表面と微生物との電気的反発力は埋入後も維持されることから抗菌効果は長期間持続される.また抗菌物質を用いないことから,周囲組織の為害作用などの不安がない.我々は人工体液中での液中放電により純チタン表面におよそ1μmのHA超薄膜コーティング処理に成功した.コーティング膜は液中放電処理中に新たに形成されたチタン酸化膜にHAナノ結晶が傾斜的に埋入されているため物理的脆弱性を克服するだけでなくチタン酸化膜の親水性官能基による超親水性を示す.本HAコーティング薄膜は,歯肉縁上プラークの初期接着菌であるStreptococcus Mitis およびStreptococcus Gordonii に対する著しい付着抑制効果を示した.したがって液中放電処理によるHA薄膜コーティングは,優れた骨結合能と抗菌性を兼ね備えた新たな歯科用インプラントの表面処理として期待できる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,in vitroで細胞培養した試料上に析出する石灰化物の物理化学的クオリティーを顕微ラマン分光およびAFMナノインデンターにより測定することができた.また高分解能のラマン分光法により,サンプル表面の石灰化物から検出したアミド結合に帰属するピークを微分することにより,有機成分であるコラーゲン分子の架橋結合を定量化する.またナノインデンテーション法では,石灰化物表面に圧子を低加重で段階的に作用させ,表面に形成された圧痕(インデント)と荷重―負荷曲線から,微小領域の硬さと弾性係数および応力ひずみ曲線を以下の原理で測定することが可能であり,各試料間や文献値と比較する可能になった.
|
今後の研究の推進方策 |
ラットの大腿骨に埋入できるミニインプラントを作成し,液中放電によるHA薄膜コーティングおよび未処理の試料を埋入する.インプラント周囲に再生される新生骨の物理化学的特性をレーザーラマン分光法およびナノインデンテーションにより測定する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
HAコーティングインプラントによる骨結合能促進を検討するために動物実験が必要である.1つの個体で複数のサンプルを作成するためミニインプラントを作製する. 最終年度は動物実験に移行し,長期経過を追及することから飼育費が発生する.さらに組織切片を作成するため必要な試薬,器具などこれら実験がルーティンに稼動した場合の最低限必要な予算を算出した.また本実験から得られるデータは学術的にも価値の非常に高いものとなることが予測されるため,国際学会発表や国際学術誌などの投稿が必要であると考えられる.
|