研究課題/領域番号 |
24390447
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
本田 雅規 日本大学, 歯学部, 准教授 (70361623)
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研究分担者 |
磯川 桂太郎 日本大学, 歯学部, 教授 (50168283)
山崎 洋介 日本大学, 歯学部, 助教 (20366610)
湯口 眞紀 日本大学, 歯学部, 助手 (00256885)
鳥海 拓 日本大学, 歯学部, 助手 (40610308)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 細胞移植 / 歯周組織再生 / 幹細胞マーカー / 脂肪組織 / フローサイトメーター / 歯髄 / 歯根膜 |
研究概要 |
1.ヒト歯根膜組織由来間葉系幹細胞と歯肉組織由来間葉系幹細胞の採取 ヒト歯根膜組織中の間葉系幹細胞をCD146の表面抗原を用いて,陽性細胞と陰性細胞に分取して,多分化能を検討したところ,CD146陽性細胞に多分化能を持つ細胞が多いことが明らかとなった。次に,矯正治療中に抜歯される小臼歯の歯根中央部からは,歯根膜が,歯頸部からは歯肉の粘膜固有層が同時に採取できることがわかった。そこで,両組織から間葉系細胞を培養増殖し,間葉系幹細胞の特性を解析したところ,歯肉粘膜固有層の細胞も,骨芽細胞への分化能を持つことが明らかとなった。したがって,歯肉の粘膜固有層も歯周組織再生に有効な細胞源であることが示唆できた。この結果については,現在,論文の投稿準備中である。 2.脱分化脂肪細胞の培養法の確立: 近年,脂肪組織から採取できる細胞にも,歯周組織再生能を持つことが報告されている。そこで,初めに,ラットの皮下脂肪組織から採取した間質細胞と脱分化脂肪細胞の歯周組織形成能を比較するために,ラット下顎骨に歯周組織欠損を作製し,培養した細胞を移植すると,どちらも細胞にも歯周組織形成能が認められた。組織再生における細胞の担体の選択は,組織再生の結果を左右することがあきらかとなっている。今回は,気孔径の違いによる歯周組織再生誘導能を評価したが,予測と反して,有意な差は認めなかった。 現在,ヒト細胞の獲得のために余剰となった頬脂肪体から,間質細胞と脱分化脂肪細胞の採取と培養方法を確立している。 3.間葉系幹細胞マーカーの発現量について: 過剰歯,永久歯,乳歯の歯髄,歯根膜および歯肉から採取した間葉系細胞の表面抗原解析を行った。間葉系幹細胞の採取に,CD105の表面抗原が有用であることを明らかにできそうである。過剰歯から採取した歯髄10例における歯髄細胞の特性については,英文論文として採択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.細胞と担体による象牙質塊の作製において,象牙質と同様な硬さを持つ象牙質塊が再生できていないので,現在,担体の基盤となるPLGAに混合するハイドロキシアパタイトの焼成と顆粒の大きさなどを検討している。 2.再生した象牙質塊の周囲に歯周組織を再生させる術式において,まだ,現在,検討中である。全体の周囲を覆う前の段階として,象牙質上に歯周組織を再生させる有用な細胞源を検討することが重要と考えて,現在,新たに,脂肪組織由来の間葉系幹細胞の評価を行っている。脂肪組織由来の細胞については,当初の研究計画に含まれておらず,新しく実験を計画し,開始していることから,当初の予定より遅れていると判断した。 しかしながら,臨床を考えるには,歯根膜の採取には,抜歯を必要とすることから,脂肪組織由来の細胞の有効性が認められれば,臨床応用を前提にした本課題においては,有用であると考えて,実験を開始したことをご理解いただきたい。
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今後の研究の推進方策 |
1.ヒト脂肪組織由来の間葉系細胞の培養方法の確立: 頬脂肪体から脂肪組織が大量に採取できる。したがって,昨年度,確立した脱分化脂肪細胞の単離方法にて,ヒト脂肪細胞からの単離を試みる。単離した脱分化脂肪細胞の特性を間質組織由来の間葉系幹細胞と比較検討することで,有意な細胞群を決定する。 2.歯周組織再生に有効な細胞源の決定: ヒト抜去歯の象牙質をEDTA処理して,象牙質上に欠損を作製し,in vitroにおいて,高い歯周組織再生能を持つ細胞群を選定する。in vitroの実験を確立することで,早期に,適切な細胞群が評価できると考えている。 3.象牙質塊への歯周組織の形成: 担体の改良を行うことで,天然の象牙質と同程度の強度を持つ象牙質塊の作製を試みる。次に,再生した象牙質塊全体を,歯周組織再生細胞にて覆うことにおいては,回転培養を行いながら,象牙質塊周囲に細胞を播種することを計画している。また,この方法の結果が好ましくないときには,温度応答性培養皿などの使用を検討する。 上記の工程により,実験の最終目標となる,象牙質塊上の歯周組織再生が現実なものとなると考えているが,本課題では,象牙質塊にセメント質が形成できることを第一の目的とする。そして,象牙質塊に播種した細胞から分泌されたコラーゲン線維が再生したセメント質に埋入されていることを確認することが大きなカギとなる。この点については,コラーゲン束の走行が容易に判断できる染色法を確立している。 一方で,歯周組織はセメント質と歯槽骨を連結させる役割を持つ。この点についての詳細な機能評価を行うことが重要であると思われるが,この点における詳細な実験はこの課題では予定していない。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度購入予定であった,表面抗原解析用または免疫組織化学に使用予定であった抗体が国内の在庫が無く,海外からの入手ということで,これらの抗体を次年度に購入するということで,繰り越しを行うこととした。 第一に,間葉系幹細胞のマーカーとなる抗体を購入し,歯周組織に有効となる間葉系幹細胞を同定する。第二に,本課題では,歯髄,歯根膜,脂肪組織から採取できる6種類の細胞を用いて,in vitroの実験を行うと,細胞培養液,試薬,血清などの購入が必要となる。第三として,ヒト細胞の移植には,免疫不全ラットの使用が不可欠となる。そこで,今年度は,ヌードラットを30匹ほど購入し,移植実験を促進させる予定である。第四として,担体の開発においては,本施設では,困難であることは,委託することになるので,委託費等が発生することになる。第五として,温度応答性の培養皿の購入など,特殊な実験器材の購入を予定し,実験の速度を上げる計画である。 これらの実験を通じて,予定通り実験を終了する計画である。
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