研究課題/領域番号 |
24390448
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
戸塚 靖則 北海道大学, -, 名誉教授 (00109456)
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研究分担者 |
大賀 則孝 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40548202)
進藤 正信 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20162802)
鄭 漢忠 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80180066)
大廣 洋一 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (40301915)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腫瘍血管内皮 / がん幹細胞 / 活性酸素 / 転移 |
研究概要 |
1)低酸素や抗がん剤処理によって細胞内に蓄積する活性酸素が,がん幹細胞においてどのようにその高い浸潤転移能や薬剤耐性などに関わっているのかを解析した.フローサイトメーターとウエスタンブロット法を用いて、腫瘍血管内皮とがん幹細胞における活性酸素(ROS)産生能を検討した. 2)薬剤処理による活性酸素量の解析:抗がん剤処理によって,上記で分離されたがん幹細胞や腫瘍血管内皮における活性酸素量とnon stem cancer cellにおける活性酸素量とを比較検討した.腫瘍血管内皮細胞では幹細胞性をもつものに高い活性酸素量を示すものが多かった.ROSの産生により,さらにがん細胞や血管内皮細胞においてROSがその染色体不安定性の機序になっているかについての解析もはじめた. 3)ROSを介したNF-κB、Baxなどの細胞内シグナル伝達の解析:低酸素や抗がん剤処理によって活性酸素(ROS)産生が生じたあと細胞内で動くシグナル伝達がどのように変化するかを解析した.ROSによってSmad2/3,NFkBが各リン酸化抗体によってリン酸化されていることが細胞免疫染色によってわかった.また,これらの分子の活性化は細胞により異なることがわかり,幹細胞に特有のROS蓄積後のシグナル伝達経路の存在が示唆された.また,Nrf2などROS産生に関わる分子として最近報告されている分子に関しても発現レベルを解析している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の大半を実施できており,興味深い知見が得られたことから,翌年度の研究計画を順調に進めることができるため
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今後の研究の推進方策 |
1)がん幹細胞のニッチとしての腫瘍血管内皮細胞における活性酸素の蓄積解析:低酸素培養器を用い、低酸素、低酸素(1%~5%02)、低栄養下(無血清培地下)で、活性酸素(ROS)能が変化するかを検討する。 また,腫瘍血管内皮細胞とこれらのがん幹細胞との相互作用を解析するために腫瘍血管内皮とがん幹細胞との接着や生存性をこれらの共培養でどのように変わるのかなどについても検討する. 2)腫瘍血管内皮における活性酸素産生ががん幹細胞に与える影響に関わる解析:がん幹細胞が未熟な性質を保持したまま血管ニッチに存在しているメカニズムを探るために腫瘍血管内皮とがん幹細胞の共培養の系において腫瘍血管内皮の活性酸素を除去し,ニッチとしての性質にどのような変化が出るのかを解析する. 具体的には腫瘍血管内皮細胞とがん幹細胞との接着やがん幹細胞が腫瘍血管内皮に対する遊走性などが腫瘍血管の活性酸素阻害によりどのように変わるのか,また,がん幹細胞の未熟さにどのように影響を与えるのかをCD90, CD133, ALDH, DLK1 CD44vなどの分子の発現の変化により解析する.3)抗酸化剤を用いての活性酸素を標的とした治療の取り組み:既存の抗酸化剤や緑茶カテキン、イソフラボンを始めとした抗酸化物質を用いてROSが除去されうるかをフローサイトメトリーにより検討する.4)がん幹細胞の活性酸素を標的とすることによるin vivo 腫瘍モデルを用いた治療実験:従来の抗がん剤と活性酸素を標的とした上記薬剤などとの併用療法がもたらす抗腫瘍効果が抗がん剤単独療法に比べてどのように異なるのかをin vivo 腫瘍モデルを用いて検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を実施していくうえで,さらに興味深い知見が得られ,その知見を追試するために次年度にその経費を使う予定である. ROSによる腫瘍血管内皮の染色体不安定性獲得のメカニズムの検証を一部展開する予定である.腫瘍血管内皮細胞と幹細胞のさらなる分離培養 が必要になり,それらをもちいてROSの蓄積,またROSの阻害による染色体不安定性の獲得機構を探る.染色体異常はFISH,ならびにセントロ ソームの複製異常の有無により解析する.
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