研究課題
癌組織は強い低酸素とともに,極度の低栄養状態にある.そこで,平成26年度は低酸素培養器を用い,低酸素,低酸素(1%~5%O2),低栄養下(無血清培地下)で,活性酸素(ROS)能が変化するかを検討した.低酸素,低栄養にすると腫瘍血管内皮においてROSが蓄積し,これまでわれわれが見出してきた腫瘍血管内皮の特性の一部が誘導された.つまり,腫瘍血管内皮においてCOX2, VEGF, PTGIR, Biglycan などこれまでわれわれが腫瘍血管内皮において高い発現と血管新生促進因子としての機能を見出している分子群の発現が亢進した.これらの分子のうち,いくつかはがん細胞の走化因子としての役割も果たしていることが見出された.これらのことはROSにより発現が誘導されるこれらの分子をつかって腫瘍血管ががん幹細胞のニッチとして機能している可能性が示唆された.さらに,がん幹細胞が未熟な性質を保持したまま血管ニッチに存在しているメカニズムを探るために腫瘍血管内皮とがん幹細胞の共培養の系において腫瘍血管内皮の活性酸素を除去し,ニッチとしての性質にどのような変化が出るのかを解析した.腫瘍血管内皮におけるROSを阻害すると,腫瘍血管内皮細胞のVEGFやIL6の発現が低下した.IL6はがん細胞の未分化性の維持に働くことが報告されており,さらにVEGFはABCトランスポーターの発現を亢進させることがわかっている.以上のことから,ROSにより腫瘍血管内皮細胞で発現亢進する分子ががん幹細胞の未分化性を維持している可能性が示唆された.最後に,抗酸化剤DPIを用いてin vivo 腫瘍増殖に対する効果を検証した.DPIにより,腫瘍のサイズは変化しなかったが,腫瘍血管のROSが低下し,血管新生も抑制された.さらに肺への転移の抑制もみられた.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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