研究課題/領域番号 |
24390451
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30344451)
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研究分担者 |
高戸 毅 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90171454)
森 良之 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70251296)
藤原 夕子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50466744)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 造血-間葉相互作用 / 造血幹細胞 / 間葉系幹細胞 / 共培養 / 幹細胞特性(ステムネス) |
研究概要 |
本研究の目的は、造血幹細胞によって誘導されるMSCのステムネス・シグナルを解明し、シグナル関連分子を活用して高ステムネスを維持するMSC増殖培養法を確立することにより、口腔外科再生医療の発展の一助とすることである。 間葉・血球共培養の確立 GFP陽性MSCとKG-1 およびMSCと造血幹細胞(HSC)を共培養し、培養後MSCの細胞増殖率を計測した。また、回収したMSCを間葉系分化誘導キット(BD社製)を用いて骨、軟骨、脂肪細胞に分化させ、幹細胞特性(ステムネス)の評価をおこなった。その結果、血球系との共培養によって、MSCの細胞増殖および分化能が維持されることが明らかになった。 ステムネス・シグナル関連分子の検索 GFP陽性マウスMSCと血球系細胞株KG-1細胞およびMSCとHSCの共培養系を用いて、シグナル遺伝子の解析を行った。共培養期間をMSCの細胞増殖がピークを迎える6日目とし、培養後、MSCのみ回収しmRANの抽出を行った。対照には同期間単独培養したMSCのmRNAを用いる。これらmRNAを用いて発現上昇または抑制する遺伝子をマイクロアレーにより網羅的に解析を行った(Affymetrix社GeneChip Mouse Genome 430 2.0 Array)。また、変動遺伝子をクラスター解析し、遺伝子変動の一般的な傾向を把握するとともに、著明な発現上昇を示す上位遺伝子を30程度検討する。候補遺伝子の発現上昇に対する再現性は、同共培養系を用いてGFP陽性マウスMSCにおける発現変化をreal time RT-PCR (AB社製7500 Fast Real-Time PCR System、現有)を用いて検討し、血球系から間葉系へのステムネス・シグナル候補の選定をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、仮説証明に不可欠であるin vtroにおけるステムネスシグナル解析を精力的に行い、順調に結果を見出すことができた。昨年年度、および本年度で基礎データはほぼ取得した。造血シグナル欠損を目的としたc-Mplノックアウトマウスの活用については、個体数を確保するべく、引き続きc-Mplノックアウトマウスを飼育し、個体数は堅調に増加している。来年度は、in vtroにおけるステムネスシグナル解析のデータを詳細に分析していき、c-Mplノックアウトマウスを用いて結論にもっていく予定である。今年度中に国際紙に公表できる見通しとなっている。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
マウス骨折治癒モデルを用いた間葉ステムネス・シグナルの検証としてc-Mpl遺伝子欠損マウスを用いる。In Vitro解析として野生型マウスとc-Mpl遺伝子欠損マウスのMSC増殖、軟骨や骨への分化誘導を比較検討する。また、ステムネス・シグナル候補分子について、マウス骨折モデルを用いてin vivoでの発現変動を評価して候補分子を絞り込む。同定したステムネス・シグナル分子を用いて、MSCの増殖ならびに多分化能を評価し、有用性を検証したのち、この因子を活用し、ステムネス・シグナルを活用したMSC増殖培養法を確立する。また、ビーグルを用いて同様に検証を行っていく。次いで、ビーグルの下顎骨区域欠損モデルを作製し、純化したMSCを移植し、骨再生を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
造血幹細胞によって誘導される間葉系幹細胞(MSC)のステムネス・シグナルの解明と、このシグナルを活用した幹細胞培養技術の確立、さらには再生医療への応用を目的として、c-Mpl遺伝子欠損マウスにおける骨折モデルを用いて、MSCステムネス・シグナルの存在を検証する。そして間葉・血球共培養を用いてステムネス・シグナル関連する遺伝子を網羅的に解析し、シグナル分子を同定する。次いで該当シグナルを活用し、高ステムネスMSCを増殖させる培養系を確立する。最後に、ビーグル下顎骨欠損モデルを作製し、同培養系で増殖培養させた高ステムネスMSCを欠損部に移植し、骨再生を評価することにより、高ステムネスMSCとその増殖培養系が再生医療に有用であることを実証する。 解析に関しては、FACS(BD社製Aria)、自動細胞計測装置(Chemometic社製NucleoCounter)、軟X線撮影(ソフロン社製軟X線発生装置SRO-i505)など必要な設備はすでに現有しており、操作・解析方法についても熟知している。研究の成果は、学会で発表し、国内、海外の科学者と意見交換するとともに、国際科学雑誌にて公表する。
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