研究課題
EMTは口腔扁平上皮癌の浸潤・転移において癌細胞に生じる必須のイベントである。癌細胞はEMTが生じて一時的に上皮形質を失い、細胞運動能を獲得して間質へ局所浸潤し、転移への前段階として脈管内移動のきっかけとなる。しかし、転移巣(二次腫瘍巣)形成のためにはEMTは解除される、或いはMETが生じる必要がある。舌癌細胞株OM-1に転写因子Snailを導入して条件依存性EMTを示すOM-1_Snailに加え、SnailとSlugを同時導入してE-カドヘリン発現消失とビメンチン発現を基準としたEMT率が90%超えるOM-1_Snail_Slug細胞を樹立した。この細胞は三次元培養において間質をミミックしたコラーゲン層にびまん性に浸潤する。そして次の段階として、OM-1_Snailから安定したEMT型細胞をクローニングしたOM-1_Snail cloneを三次元培養すると、まず、コラーゲン上で細胞は重層せず、コラーゲン内にびまん性に浸潤したのちにMassを形成した。これら両者の違いが重要だと考えられる。SlugはSnailのEMTプログラム進行におけるサポーター分子であると同時に、細胞内で人工的に導入すると両分子は相対的な発現を示す。すなわち、正常基底細胞で分化を規定するSnailから癌細胞におけるSnailの発現への切り替えでEMTプログラムが進行し、サポーター分子やエピジェネティックな修飾でEMTがフィックスされる。したがって、OM-1_Snail cloneは可逆性EMTの最もEMTプログラムが進行した状態であり、Snailの恒常的発現下におけるMETの始発点でもある。この可逆的EMT誘導モデルを完成させ、分化や浸潤、幹性などに関わる分子の発現を網羅的に解析した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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J Oral Pathol Med
巻: 45(3) ページ: 180-188
10.1111/jop.12348