研究課題/領域番号 |
24390455
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
林堂 安貴 広島大学, 大学病院, 講師 (70243251)
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研究分担者 |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (00169153)
新谷 智章 広島大学, 大学病院, 助教 (90403518)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔癌 / カドヘリン / プロセシング / アンチプラスミン / 浸潤・転移 / アンチプラスミン / 細胞間接着 |
研究概要 |
これまでにプラスミノーゲン/プラスミン系は口腔扁平上皮癌のE-カドヘリンを細胞間接着活性部位で切断することで,細胞間接着を抑制し細胞凝集能を低下させ,扁平上皮癌の細胞遊走を亢進していることをみいだしてきた.本申請課題は,口腔扁平上皮癌にα2-アンチプラスミン遺伝子の導入し,α2-アンチプラスミンを発現誘導させることでプラスミノーゲン/プラスミン系の機能を抑制し,細胞凝集能を亢進させ,扁平上皮癌の細胞遊走能を低下させることで,口腔癌の浸潤・転移を抑制する新しい治療法を開発することを目的としている. ヒト肝臓total RNAからRT-PCR法にて増幅したプラスミン阻害分子であるα2-アンチプラスミンcDNAを哺乳動物発現ベクターpCI-neoに組み込むことでpCI-neo/α2-antiplasminを作製した.pCI-neo/α2-antiplasminを口腔扁平上皮癌細胞に導入すると,α2-antiplasmin蛋白が高発現することが確認できた.α2-antiplasmin蛋白発現に伴い,扁平上皮癌細胞のE-カドヘリンのプロセシングが抑制され, E-カドヘリンが高発現していることが示された.また,α2-antiplasminが高発現した扁平上皮癌細胞は,細胞増殖に関与するc-mycの遺伝子発現が低下し増殖能も抑制されていた.α2-antiplasmin発現誘導により,扁平上皮癌細胞の凝集能と運動能が低下し,I型コラーゲンゲルへのin vitro浸潤能も低下していた.さらに,α2-antiplasmin遺伝子が導入された扁平上皮癌細胞は,ヌードマウスでのin vivo増殖能が著しく抑制され,形成された腫瘍の細胞膜上にE-カドヘリンが高発現していることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
α2-アンチプラスミン蛋白発現の誘導ためのα2-antiplasmin遺伝子が組み込まれた哺乳動物発現ベクターを作製し,これを用いて口腔扁平上皮癌細胞にα2-アンチプラスミン蛋白発現誘導を行うことができた.α2-アンチプラスミン蛋白発現誘導が,扁平上皮癌細胞のE-カドヘリン発現を亢進させ,増殖に関与する遺伝子発現を抑制し,細胞増殖能と細胞遊走能を低下させることが確認された.さらに,α2-アンチプラスミン発現誘導は,in vivoにおいても扁平上皮癌細胞のE-カドヘリン発現を亢進させ,造腫瘍能を低下させることが確認されたため.
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今後の研究の推進方策 |
in vivoでの造腫瘍性の詳細な解析とともに,扁平上皮癌の増殖に関連すると考えらる遺伝子群(Wnt,カテニン,サイクリンD1等)の探索を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の試薬,機器等の使用に関して,工夫した結果,他の研究者と共用することが可能となったため,予想以上に出費を抑えることが可能となった. 今年度での研究に使用する試薬等において,他の研究者と共用可能なものは少ないために,大量の遺伝子研究に関連する試薬,抗体及びヌードマウス等が必要となり,さらに遺伝子解析ソフト等のデータ解析用ソフトやパソコン用を購入する必要がある.
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