研究課題/領域番号 |
24390456
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (00169153)
|
研究分担者 |
林堂 安貴 広島大学, 大学病院, 講師 (70243251)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 口腔癌 / 癌幹細胞 / 無血清培養 / 無血清浮遊培養 / sphere形成能 / HIF-1a / side population細胞 / CD133 |
研究概要 |
今年度は、ヒト口腔扁平上皮癌(OSCC)における癌幹細胞候補として、SP(side population)細胞を標的とした新しい診断・治療法を開発する事を目指した。幹細胞は非幹細胞と比較しABCトランスポーターが高発現されているためHoechst33342で細胞を染色すると同色素が排出されるため、色素で染色されにくくなる性質を利用したもので、フローサイトメトリー解析にて、hoechst33342処理した細胞をUV光で励起すると大部分の細胞は蛍光強度の高い細胞集団MP(main population)として同定されるが、薬剤排出能の高い細胞(SP)は蛍光強度の低い細胞群として分離される。 OSCCよりSP細胞を分離し、癌幹細胞としての機能および分子標的としての可能性を検討した結果、以下のことが明らかとなった。1. OSCC細胞株由来SP細胞の全細胞における比率はわずか1%程度であった。2. SP細胞の単層無血清培養系での細胞増殖能はMP細胞のそれと比較し低下していた。3. SP細胞はMP細胞と比較し単層および浮遊培養系のどちらにおいても抗癌剤(塩酸ドキソルビシンDXR)耐性を示した。4.SP細胞を1%低酸素下にて継代培養すると、SP細胞は高い比率で維持できた。5. HIF-1α遺伝子導入SP細胞では通常酸素下でもSP細胞の維持が可能であった。6. ヌードマウス背部皮下移植による腫瘍形成能の比較により、MP細胞は腫瘍形成能を示さなかったが、SP細胞は高い腫瘍形成能を示した。7. CD133遺伝子の発現抑制により、SP細胞の低酸素応答能は低下し、低酸素下においてもSP細胞は維持されなくなった。8. DNAマイクロアレイ解析にて、SP細胞とMP細胞の比較を行うと、薬剤耐性遺伝子などの遺伝子発現の差異を認めるとともに、IL-6やIL-8について大きな差を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ヒト口腔扁平上皮癌(OSCC)における癌幹細胞候補として、SP(side population)細胞を標的とした新しい診断・治療法を開発する事を目指して、OSCCよりSP細胞を分離し、癌幹細胞としての機能および分子標的としての可能性を検討し、SP細胞は口腔癌の幹細胞候補として有力であることが明らかにすることが出来た。昨年度のCD133陽性細胞の結果と合わせると、SP細胞でかつCD133陽性細胞群が最も幹細胞として最有力であると考えられるので次年度は「SP細胞/CD133陽性細胞」の特徴と明らかにすることで本研究は大きく進展すると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果から、CD133遺伝子の発現抑制により、SP細胞の低酸素応答能は低下し、低酸素下においてもSP細胞は維持されなくなったこと、およびDNAマイクロアレイ解析にて、SP細胞とMP細胞の比較を行うと、薬剤耐性遺伝子などの遺伝子発現の差異を認めるとともに、IL-6やIL-8について大きな差を認めた。従って、今後は、 in vitroにおけるSP細胞と低酸素環境による維持の相互関係を明らかにすることを目指す。細胞培養上清よりSP細胞が特異的に発現・産生しているサイトカインやケモカイン等を明らかにし、通常酸素環境と低酸素環境での癌細胞の発現しているサイトカインの比較検討を行う。また、種々の細胞増殖因子やインヒビター、中和抗体のSP細胞およびMP細胞に及ぼす影響を無血清浮遊培養法および無血清単層培養法にてそれぞれ比較検討すると同時に、細胞運動能や浸潤能の検討、さらにin vivoにおける腫瘍形成能の比較検討を行う。また、SP細胞とMP細胞における各種癌幹細胞マーカーの比較検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ヌードマウス移植口腔扁平上皮癌幹細胞を用いた分化誘導治療や遺伝子治療の開発研究を計画していたが、動物実験施設のスペースの問題で予定通りの研究を遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度において自己複製や分化に関与する増殖因子、細胞外マトリックス蛋白や遺伝子群 に対する中和抗体や siRNA 分子のヌードマウス移植癌幹細胞に及ぼす影響を検討する。
|