研究課題
MicroRNA (miRNA) は約 22 塩基からなる小分子 RNA で、標的mRNA に結合することでその蛋白質発現を阻害する。近年、種々の悪性腫瘍において癌遺伝子的な性質を有する oncogenic miRNA (OncomiR) と癌抑制遺伝子様の機能を発揮する tumor suppressive miRNA (TS-miR) の存在が報告されている。さらに、ヒト体液中から miRNA が検出できることから有用なバイオマーカー候補としても注目されている。そこで、われわれは口腔癌の診断および治療に有用となる miRNA を探索した。まず、ヒト口腔扁平上皮癌細胞を用いてヒト miRNA の網羅的機能解析を行った。ヒト miRNA 918 種類に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた網羅的機能阻害解析では、口腔扁平上皮癌細胞の増殖を支持する miRNA を 14 種類同定した。一方、ヒト miRNA 1,000 種類の模倣型合成 miRNA を用いた網羅的過剰発現解析では、口腔扁平上皮癌細胞の増殖を抑制する miRNA を 16 種類同定した。つづいて、口腔扁平上皮癌患者の血清および唾液より miRNA を抽出し、マイクロアレイによる網羅的発現解析を行った。健常者と比較して癌患者の血清では 2 種類の miRNA の存在量が上昇しており、12 種類が低下していた。また、唾液では癌患者において 20 種類の miRNA の存在量の低下が認められた。以上の結果は、ヒト口腔癌細胞の増殖を制御する OncomiR や TS-miR、そして口腔癌患者の体液中で特異的に変動する miRNA が存在することを示唆している。
3: やや遅れている
ヒト口腔癌細胞ヌードマウス背部皮下移植腫瘍に対する miRNA アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび模倣型合成 miRNA の抗腫瘍効果が確認できていない。生体へのこれら合成核酸の投与においては何らかの送達担体が必要である。
miRNA アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび合成 miRNA を生体内腫瘍に選択的に送達可能な担体を検討する。具体的には、核酸結合ペプチドの有用性について評価する。
miRNA アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび合成 miRNA を生体内腫瘍に選択的に送達可能な担体を検討するための実験動物を本年度使用しなかったため。生体内送達媒体としての核酸結合ペプチドの有用性について評価するための動物実験に用いる。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Neoplasia
巻: 15 ページ: 805-814
Oral Oncology
巻: 49 ページ: 551-559
10.1016/j.oraloncology.2013.02.002.