研究課題/領域番号 |
24390477
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
谷岡 哲也 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90319997)
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研究分担者 |
川西 千惠美 独立行政法人国立国際医療研究センター, 国立看護大学校, 教授 (40161335)
井上 喜雄 高知工科大学, 工学部, 教授 (50299369)
安原 由子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (90363150)
千葉 進一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (30515622)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ロボット / 看護学 / ケアリング / 技術的能力 |
研究概要 |
最新の医療福祉ロボットの中で看護ロボットとは何か、看護ロボットを使用するときの看護におけるケアリングとしての技術的能力(看護の表現)とは何かを明確にすることが目的である。 日本では看護師が不足しており、定型化した看護業務の一部をロボットが担うことができるのかという研究課題を探求する中で、本研究では人間の看護師しかできない技術(看護としてのケアリング)とは何かを検討している。 看護としてのケアリングと技術力の2つの概念は、極めて重要であり、本研究は枠組みとして、Locsin 博士の看護の枠組みを用いている。この枠組みは看護実践を支えるケアリングという概念の哲学的、人間学的根拠づけを論じ、技術力(看護においてテクノロジーを利用する能力)は、その瞬間に全人的で完全な人を理解するという看護師の熟練した看護の表現であることを述べている。そのテクノロジーの一つにロボットがある。 技術力を持った看護師が臨床の看護におけるケアリングを表現できる。このためには、人を理解することが重要であり、次の4つの方法がある。1.科学的に理解する:情報収集とアセスメント、2.個人的に理解する:全人的にその人を理解する、3.倫理的に理解する:適時の倫理的判断を行う、4.審美的に理解する:深く患者を知り患者と経験を共有する。 平成25年度は前述の1~4の方法の中で人間の看護師にしかできない業務は何かについて検討し、検討した成果を平成26年5月に行われる国際ケアリング学会で共同研究者らがシンポジウムを行う。また、ケアリングを基盤とした看護基礎教育についてポスター発表も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は人間の看護師にしかできない業務は何かについて検討した成果について、平成26年5月に行われる国際ケアリング学会で「Preserving Human Naturalness: The Paradox of Nursing Caring in a Technological World」というタイトルで、共同研究者らがシンポジウムを開催する。また「Locsin's caring model education and its educational effect in the University of Tokushima」という演題で、ポスター発表も行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、臨床現場にロボットが新たに導入されるときの倫理的・道徳的課題を看護の立場から明らかにする。韓国産業資源省は、ロボット倫理憲章の草案を発表し、ロボット開発者、使用者、ロボットの従うべき倫理を提示した。千葉大学は、知能ロボット技術の教育と研究開発に関する千葉大学憲章を制定し、非倫理的、非合法的な利用を防止する技術をロボットに組み込むことを規定した。しかし医療現場へロボットを導入する際の倫理については、ほとんど議論されていない。ロボットには看護師のような免許がない。ロボットの技術的保証をどのようにするか、ロボットが人に触ることが許されるか、ロボットが暴走した時の危険回避をどうするか、ロボットに倫理的判断ができるように誰が「倫理的な行動」をプログラムするのかを検討する。 これまで、人のケアは人と人の関係において実践されている。ロボットが病棟に導入されたとしたら、この「表現」は変化せざるを得ない。Dr. Locsinは高度な医療環境では高度な看護の技術を通して、ケアリングとしての看護が表現されると指摘している。患者の状態は刻一刻と変化するが、適時の判断を下す必要がある看護業務の一端を看護ロボットが分担できるのか倫理的・道徳的課題を検討する。 これらの研究成果を国際学会にて発信していくとともに、看護職者の考えるロボットの倫理的な行動について情報収集を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は当初の予想に反し、日本国内においても介護ロボットの臨地実証試験が開始され、想定以上の研究が発展していることが明らかとなった。私たちの研究では看護の視点で看護ロボットの安全性や倫理的課題、機能性について検討を行っているため、基礎研究となる現状調査に時間を費やした。 国内での学会や企業展に参加し情報収集に注力することで、人件費や謝金を抑制し、平成26年度の実験研究に取り組み、データを蓄積する必要があるため人件費・謝金として次年度に活用したいと考える。 平成26年度は5月に国際学会に参加し、看護ロボットの倫理的課題、安全性、機能性について発表し、意見交換及び情報交換を行う。また、看護ロボットと人とのコミュニケーションが成立するのか人間の自律神経活動の解析結果を評価指標として検証を行い、人間と看護ロボットの間に共感や理解といったケアリングの感情が成立するかについて実験を行う。それらのデータを蓄積し、学会発表や論文投稿を行う予定である。そのため出張費用、実験に伴う人件費と謝金、論文投稿費用が必要となると考えている。 次年度使用額143,652円は、実験研究・データ処理のための人件費・謝金に使用する予定である。
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