研究概要 |
当該年度の研究では,入浴事故による死亡者(以下,死亡例)だけでなく救命救急による生存者(以下,回復例)も含めた事故発生に関する調査と回復例自身へのインタビューを通して入浴事故の実態を明らかにすることが目的である.調査項目は,研究代表者が先行して実施した調査票を基に19項目から構成した.倫理審査は,平成24年9月に研究代表者が所属する倫理委員会の承認を受けて開始した.調査する地域は全国を対象にすると無作為抽出は困難なので,寒暖の差を客観的データと1つの市の人口分布から割り出し,約7つの都道府県から2~3の市町村を対象にデータ収集を行う.調査期間は平成23年度の1年間として,データ収集件数は大よそ1300件(1都道府県につき約300件の予定)の予定である.現在,群馬県のデータが1市を除いて2町村群から228件(死亡例:48件,回復例,181例)収集できた.このデータから死亡例に対して回復例が約3.8倍を占めており,回復例の入浴による事故発生件数が多いことが示された.さらに,2町村群の地域性をみると,一方は湯温の高い温泉街を含む地域であり,その地域に事故発生件数が多く,偏りが認められた.これは温泉地が多い地域の特性と推測され,安全な入浴がどのように実施されているか検討課題となるかもしれない. また,入浴事故の発生プロセスを把握するために回復例自身へのインタビューを計画しているが,現在,インタビューガイドを作成中である. さらに,平成25年度は,入浴事故発生の要因の一つと予測される脳血流障害の発生に対する基礎実験を予定している.そのための測定機器として携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置を購入した.加えて関連する生体反応の測定として自律神経解析を行うためのMemCalc/Winとそれに対応した心電計を購入し,実験の準備を整えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が,本研究に先行して実施した研究を学会発表及び論文作成に時間を要したことが大きな原因である.それらの研究成果は下記に示した.また,入浴事故発生事故調査に関しては,計画当初は寒暖の差を北海道から鹿児島までの地図上から選択したが,研究データを説明する根拠に乏しいことに気づき,再検討が必要になったことが要因である.
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今後の研究の推進方策 |
・入浴事故による調査を続行し,本年度に分析を行い年度末ごろに学会発表,論文作成する. ・入浴事故発生の背景と身体情報を得るための回復例自身へのインタビューは,被験者への依頼に時間を要すると考えられるため,夏以降に実施する予定である. ・入浴による基礎実験は,当該年度はプレ実験を行い,本格的なデータ収集は来年度に実施する. ・海外の入浴環境の視察(アメリカ,韓国)
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次年度の研究費の使用計画 |
・当該助成金が生じた状況に関しては,入浴事故のデータ収集が遅れたため研究協力依頼のための旅費,及びデータ整理のアルバイトを雇う人件費,回復例自身へのインタビュー謝礼が実施されていないためである. ・次年度は上記計画を履行し,海外視察,学会発表,専門知識の提供を受けることに使用する.
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