研究課題/領域番号 |
24401010
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
飯塚 正人 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90242073)
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研究分担者 |
山岸 智子 明治大学, 政治経済学部, 教授 (50272480)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 多国籍 / 宗教思想史 / 政治思想史 / イスラーム史 / 民主主義 / アラブの春 / アズハル |
研究概要 |
本研究は、2011年に到来したいわゆる「アラブの春」を経て、エジプト・チュニジア・リビアの北アフリカ三国で民主化が進行するなか、イスラームの位置づけが最大の課題・争点となっていることに鑑み、近現代における「イスラーム民主主義」をめぐる思想を精査するとともに、今後の実現可能性を現地調査によって明らかにしていくことを目的としている。 この目的を達するため、平成24年度には研究代表者の飯塚と分担者の山岸が、二度にわたって合同の現地調査を実施した。チュニジア、エジプト、フランスでは「イスラーム民主主義」思想に関する資料収集を行うとともに、「民主化」後の北アフリカ三国で今後いかなる「イスラーム民主主義」の実現可能性が高いかについての聴き取り調査を行った結果、2012年春のエジプト大統領選挙にも出馬したイスラーム主義の思想家ムハンマド・サリーム・アウワーの見解が広く注目を集めており、今後の展開を占ううえで無視できない影響力を持っていることが明らかとなった。また、続く二度目の合同調査では、レバノンとUAEにおいて関連資料の収集を行う一方、北アフリカ三国にとって「イスラーム民主主義」の唯一の参照モデルであるイラン型「イスラーム民主主義」の抱える問題点について、シーア派知識人への聞き取り調査を行った。加えて両国では、2012年末に発効したエジプト新憲法第4条(イスラーム法に関係する問題について、アズハルの上級法学者に相談すべきことを定めたもの)の意味するところについても突っ込んだ意見交換を行い、この条項が、運用のしかたによっては実質的にイラン型の「イスラーム民主主義」に代わる新たな「イスラーム民主主義」につながり得る可能性を確認した。 なお、こうした研究成果を社会にも還元すべく、2012年10月には東京大学大学院人文社会系研究科などと合同で、シンポジウム『「アラブの春」とイスラーム復興』を主催している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の平成24年度は研究代表者と研究分担者が個別に現地調査を行って、二年度目以降の共同調査に資する計画でいたが、それぞれの専門地域についての研究が予想以上に進展したため、最初から共同調査を実施することができた。しかしながら、イランについては、2013年6月に大統領選挙を迎えることから、本研究のような調査を行うことが極めて困難かつ大きな危険をともなう状況となっており、現地調査を延期せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初からの研究計画に従い、関連資料の収集と聴き取りを目的とする合同現地調査を継続しながら、研究対象の分析を進める。ただし、イランでの調査については今後も危険をともなう可能性があるため、状況が好転しない場合には、在外イラン人や近隣諸国に暮らすシーア派知識人への聴き取りなどをより一層重視していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の山岸が現地調査のため、軽量かつバッテリー駆動時間の長いノートパソコンを購入する予定であったものの、条件に適う製品を購入するに十分な予算を確保できなかったこと、また平成24年度末に新製品が発売されることから、次年度使用とした。このほかの交付金は、関係資料の購入費と海外調査旅費に当てる予定。
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