2011年の「アラブの春」に始まる北アフリカ諸国の民主化過程では、イスラームの位置づけが最大の争点になると思われたことから、「イスラーム民主主義」の近現代思想史を精査する一方、今後の実現可能性に関する現地調査を行った。その結果、中東諸国における「イスラーム民主主義」の実現は、強権的な軍事政権(エジプト)やイスラーム法学者の政権(イラン)、国内政治における対立・分裂(リビア)に妨げられる一方、分裂・対立を回避する良識が働けば、世俗派への譲歩を余儀なくされるため(チュニジア)、現時点では極めて困難であることが明らかになった。また、予期せざる研究成果として、ISIL台頭の思想史的な位置づけも行った。
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