研究課題
2011年に始まったアラブ諸国での民主化運動は、当初、「アラブの春」と言われて中東民主化を促すかにみえた。本研究も構想段階では民主化の動きがトルコ語圏、ペルシャ語圏、あるいはアフリカ諸地域にどのような影響を及ぼすかを主たる課題としていた。しかしながら、アラブ諸国における民主化はチュニジアで一定の成果を収めたものの、エジプトはシーシ政権によるクーデタにより阻害され、リビアは崩壊の危機、シリアは4年に渡る内戦に陥り、イラクは分裂の危機、イエメンも崩壊寸前となった。中東地域がこれだけ一気に不安定化する状況はかつてなかった。この間「イスラム国」という新たなイスラム主義武装組織が登場したことは、世界を震撼させた。本研究に属する研究者は、後半の段階でシリア内戦、イラク分裂の帰結としての「イスラム国」の台頭というこれまで中東・イスラム世界が経験したことのない深刻な病理と向き合うことになった。本研究に参加する研究者は、「中東」という地域を構成する領域国民国家の秩序が根底から揺さぶられているという現実認識に立って研究を遂行した。同時に、2015年1月にはフランスを震撼させるシャルリー・エブド襲撃等同時テロ事件が発生した。事件は中東・イスラム世界の側でのイスラム主義過激派組織の動向と同時に、ヨーロッパにおける移民、格差、表現の自由の諸問題の重層的構造から成る。とりわけ表現の自由に関しては、西欧世界が普遍的とする価値とイスラム世界の価値との間にある種の共約不可能性が存在することをうかがわせており、今後、領域国民国家体制の限界とともに、より広い視野でのイスラム地域研究に必要な視角となると考える。本研究では、参加研究者の専門とする諸地域について、急速に展開した民主化への要求が様々な反動をもたらすメカニズムについて研究が行われてきたが、今後はそれらを統合する研究へと深化させることが課題となろう。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Conference Proceeding of Challenges to Democratization in the Middle East: The US, Turkey, and the Arab World, at the Auditorium of New York Institute of Technology, New York, April 28, 2014,
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