研究課題
本年度は、平成26年2月に行なったスレイマニヤ(イラク・クルド自治区)における現地調査で採取した試料の分析を中心に研究を進めた。4月初旬に関係者が集まり、粘土板胎土のサンプルについて具体的な分析方針を議論した(同志社大学:4月2日)。また、この会議で平成26年度の研究目標を「粘土板胎土の性質と由来を明らかにすること」と定め、1年間の研究計画を話し合った。イラクでは6月に武装勢力IS(「イスラム国」)が台頭し、イラク北部を掌握する事態に至ったため、本年度2月に予定していた第3回現地調査の是非を判断するため、英国の研究者たちに協力を求めて情報収集に努めた。その後、日本人人質の殺害を含め中東全域における急激な治安悪化が生じ、また外務省・文科省からの渡航に関する注意喚起(平成27年2月9日付)を受けて、平成26年度のスレイマニヤ現地調査を断念した。代替調査先として、大英博物館とウィーン美術史美術館を選び、ウィーンの調査では粘土板に記されたテキストの読解を中心に研究を進めた。大英博物館では、以前に採取した粘土板サンプルを珪藻にこだわらない新たな視角から分析した。これらの研究成果を、スレイマニヤ博物館で採取した粘土板胎土の分析結果と照合し、粒度組成・薄片・元素組成・生物指標など多角的な視点から行なう研究を進めた。この成果を1月に国内メンバーと共有・議論する研究会を開催した(国士舘大学:1月24日)。この研究会で、日本のイラク考古学研究において中心的な役割を果たしてきた国士舘大学の発掘調査の歩みについて、研究分担者の小口和美が発表した。2月には大英博物館関係者を含む英国の研究者と議論する研究会を開催した(ユニバシティ・コレッジ・ロンドン:2月23~24日)。昨年度のスレイマニヤ調査を中心とする活動について、ニュースレター6号にまとめて報告し、研究内容を広く発信した。
3: やや遅れている
ISの台頭による急激なイラク北部の治安悪化に伴い、本年度は現地調査を行なうことができなかった。そのため、新たな現地調査ならびに分析用試料を入手できなかったことが主な理由である。しかしその一方で、本年度中に行なった分析は順調に進んでおり、粘土板胎土の由来に関して新たな知見の構築に寄与している。
平成27年度は本研究の最終年度となるため、これまでの調査・分析結果をまとめ、学会発表ならびに論文の投稿を中心に進めていく予定である。イラクの危険な状況はおそらく短期間に改善しない可能性が高いため、新たな調査のための渡航は行わず、これまでに達成した研究成果のまとめと発信を行なうとともに、将来の新たな研究につなげるべく課題を整理する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 6件) 図書 (4件) 備考 (1件)
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