研究課題/領域番号 |
24401021
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
佐藤 一郎 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (30143639)
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研究分担者 |
木島 隆康 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (10345340)
工藤 晴也 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (90323758)
秋本 貴透 東京藝術大学, 美術学部, 准教授 (60635233)
中川原 育子 名古屋大学, 文学研究科, 助教 (10262825)
谷口 陽子 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (40392550)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 絵画材料 / 絵画技術 / シルクロード / 仏教壁画 / 国際研究者交流:中国:キジル |
研究概要 |
本研究は、東トルキスタン(中国、新疆ウイグル自治区)クチャ近郊のキジル石窟仏教壁画を対象に、現地に今なお残されている壁画のみならず、20世紀初頭ドイツ探検隊(グリューンウェーデル、ルコック)により持ち出されたキジル石窟片(ベルリン、アジア美術館蔵)についても、高精細デジタル画像写真および蛍光X線解析装置による調査研究をおこない、それらによって得られたデータをもとに、以下の基層研究をおこなった。①キジル石窟壁画に使用された絵画材料の自然科学的調査研究および分析をおこなった。②地塗り、絵具層の顔料、媒剤の同定を試み、絵画技術の実態を推測する。さらに、美術史的解釈を試みた。③マンセル色票を使用した彩色目視調査を実施し、キジル石窟壁画の支持体、地塗り、絵具層と連なる彩色復元を試みる。 2012年11月ロシアのエルミタージュ美術館所蔵のシルクロードの西トルキスタンの壁画、とくにシンジケント壁画を調査研究する。ダーレムのアジア美術館を訪れ、当館所蔵のキジル石窟壁画片をノーマル写真撮影、側光線写真撮影をおこない、同時に、カラーチャートの彩色調査もおこなった。特別展「グリュンヴェデルの足跡」を鑑賞の後、アジア美術館保存修復研究室にて、ラッセルスミス学芸員、ガブッシュ修復家を交え、今後のキジル石窟調査に関してディスカッションをし、相互に意見交換、情報交換ができた。2013年3月、中国新疆ウイグル自治区のキジル石窟調査研究に赴いた。4年間協議を重ね、「尖閣諸島」問題などで遅延していたが、2013年3月19日「キジル壁画中国キジル研究院+日本東京芸術大学共同プロジェクト」の協定書に調印が行われた。2014年8月、キジル石窟調査(第69窟、第167窟、第224窟)をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度の3月、ようやく東京芸術大学と亀茲研究院との共同研究合意書に正式に調印し、本格的な現地調査を開始した。8月下旬にキジル石窟に赴き、第69窟、第167窟、第224窟の3つの石窟の部分的な壁画に対して、高精細デジタル撮影による可視光線、紫外線、赤外線撮影、および携帯式分析機XRFによる非破壊、自然科学的な調査を実施した。また、調査終了時に亀茲研究院にて調査報告会を開催した。 炭素12による年代測定を名古屋大学に依頼し、結果がでている。クロスセクションの作成は、協定により、破壊検査でもあり、不可能である。蛍光X線による元素分析調査はでき、来年度解析するが、かなりの成果がでると期待できる。洞窟内の寸法測定の精度を上げたいと、考えていたが、中国側はいかなる測定も不可能ということで、進捗していない。
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今後の研究の推進方策 |
2013年においてはフラッシュ撮影の許可が下りず、自然光とレフ版のみで撮影し、天候の関係で撮影を断念した測光線の撮影を中心に実施する。 亀茲研究院側の研究分担者のうち、若手研究者3名を招聘し、それぞれ、(1)材料の化学分析、(2)壁画の模写・復元、(3)壁画の年代研究と復元研究を共同で実施し、本科学研究費研究報告書、ならびに次年度中国国家文物局に提示する報告書作成を行う。 研究会を隔月で開催し、各研究分担者の研究の進捗状況の報告、および研究発表を行う。 ミニシンポジウムを開催し、本科研にかかわる内容について研究発表を行い、議論する。ただし、基礎的なデータの開示は、なによりも先に中国で行うことが義務づけられているので、この点については亀茲研究院の協力と合意の範囲内で行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度が最終学年度であり、科研報告書を充実したかたちにしたいと考え、今年度の物品費を極力抑制した結果である。 181,593円次年度使用額は、最終年度にあたる科学研究費報告書の編集印刷費およびそのときの人件費にあてる予定である。8月に、キジル石窟(第69窟、第167窟、第224窟)の調査研究をおこなう。旅費がかかる。 泥壁を自製し、その当時の顔料で再現模写作業を進める。そのために材料費、人件費が必要となる。
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