研究課題/領域番号 |
24401025
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
松岡 洋子 岩手大学, 教育推進機構, 准教授 (60344628)
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研究分担者 |
足立 祐子 新潟大学, 国際センター, 准教授 (00313552)
郭 俊海 九州大学, 留学生センター, 准教授 (20377203)
西山 教行 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30313498)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コミュニティキーパーソン / 複言語コミュニケーション能力 / 研修 / 国際研究者交流(シンガポール、ドイツ、韓国) / 国際情報交換(カナダ) |
研究実績の概要 |
Ⅰ.26年度は、韓国、ドイツ、シンガポールにおいて、多文化コミュニティ構築に資する施策、事業について聞き取り調査を行った。さらに、シンガポールにおいて研究集会を開催し、年齢、民族、言語等の多様な社会における共同体意識の醸成について意見交換を行った。その結果、以下のことが示唆された。 1)単言語・単文化的傾向の強い、ドイツ、韓国では、移住者に対する言語教育と同時に、就労のためのスキル習得や子どもの教育への関与の方法などの教育に力を入れ、自律的な社会統合を促進している。経済的に安定した生活を送ることがコミュニティ参加の基礎となり、それを支えるものが言語能力・社会適応能力と捉えられる。不安定な雇用状況、経済状況のままでは、移住者がコミュニティの安定的成員にはなりえず、コミュニティも不安定化する恐れがある。 2)コミュニティでは、通訳・翻訳などを専門とする人材の育成・配置以上に、コミュニティリーダーやキーパーソン自身が異文化の違いへの配慮、必要な状況での複言語的コミュニケーションスキルを習得することが有効である。特に災害時、近隣トラブルなど、個別性、即時性が重要なコミュニケーション場面においては、通訳・翻訳人材を確保するより、コミュニティキーパーソンが適宜対応することが現実的であり、コミュニケーションを円滑に進められる。
Ⅱ.国内外でのコミュニティ課題の事例を収集し、分類整理を行った。この事例の中から防災リーダー、ツーリズム関係者、国際学生宿舎等を対象とする、コミュニティリーダー研修用の事例素材を4コマ漫画形式で作成し、防災、ツーリズムの分野でリーダー研修にて試用し、研修効果について検証した。その結果、研修全体の構成(知識伝達と体験)の改定が必要であるが、受講者に一定の気づきを促し、態度の変容が認められた。27年度中にさらに改定を加え、研修等で試行をする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度には、海外事情調査および、人材育成用の研修素材の収集作業を予定していたが、以下の通り研究が進み、概ね計画通り(あるいは一部計画以上)に進展した。 ①26年度は、コミュニティでのコミュニケーション課題について、事例収集を行い、整理する計画であったが、国内外で事例収集を行った。さらに、事例の中から典型的なものについては研修素材(4コマ漫画)を作成し、27年度に予定していた研修での試用を26年度中に3か所(横手市、八戸市、大田区)で行い、研修の構成、効果等について一定程度の検証を進めることができた。 ②シンガポールでの研究集会を計画通り開催し、情報交換を行った結果、研究者だけでなく、実践者、学生等から幅広い意見聴取ができた。 ③韓国、シンガポール、ドイツにおいて、研究者、コミュニティリーダー、行政機関関係者に聞き取り調査を行い、移住者と受入れ社会のコミュニケーション課題の事例およびその解決方法、施策について情報収集を行い、その結果を整理し、一定程度の類型化をすることができた。 ④研究成果報告を国内外の学会等にて行った。また、研究成果の出版に向けて、出版社と打ち合わせを開始し、最終年度中の出版に向けて準備を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
27年度(最終年度)は、計画に基づき以下のように研究を推進し、研究成果をまとめる予定である。 ①これまで収集した多文化コミュニティにおけるコミュニケーション課題についてさらに整理、分類を進め、類型化を行うとともに、コミュニティキーパーソン人材研修用の事例集としてまとめる。その中からトピック、職務等で求められる人材育成のための典型的な事例ではマンガを作成し、研修提示用素材とする。 ②①を活用し、岩手県内を中心に人材育成研修を試行し、研修のあり方について効果を検証する。また、その成果をまとめ、多文化コミュニティに必要な人材育成研修のテーマ、対象、進め方について提言を行う。 ③国際研究集会(京都を予定)を開催し、海外研究者等と国内の研究者、関係者との情報交流を進め、多文化コミュニティに必要な施策および人材とその育成について広く研究成果を公表する。さらに、海外の研究者、実践者および研究チームメンバーの論文・報告をまとめ、出版物として成果を公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
カナダ関係の調査・資料収集が研究協力者との日程調整上の都合により、計画通り実施できなかったものがあり、その経費を27年度に繰り越すこととなった。さらに、ドイツ、韓国、シンガポールでの聞き取り調査の文字起こし作業等の依頼が調査者の本務が年度途中で多忙化したため遅れ、その分の経費が27年度に繰り越された。また、研究チーム全体での研究打ち合わせが、日程調整上の都合により実施できなかったため、この分の経費も27年度に繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
カナダ関係の調査・資料収集として、カナダの研究者との座談会を実施し、出席謝金及び編集作業謝金等を支払う。また、研究チーム全体の打ち合わせを10月に実施し、旅費等を使用する。
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