研究課題/領域番号 |
24401026
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
小口 雅史 法政大学, 文学部, 教授 (00177198)
|
研究分担者 |
關尾 史郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70179331)
片山 章雄 東海大学, 文学部, 教授 (10224453)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 比較歴史学 / 比較史料学 / 敦煌出土文書 / 吐魯番出土文書 / 断簡接続 |
研究概要 |
まず在東欧・北欧コレクションの中核に位置すると目される在ベルリンのコレクションについて、あらためて現状分析をまとめた上で、ベルリンの海外研究協力者Ch.-S.ラッシュマン女史のもとで、ベルリンから流出した経緯や所在の可能性について改めてまとめなおした。またベルリンのコレクション自体の再検討過程で、研究代表者の小口が、それらを日本古代の秋田城出土の木簡類と比較することによって新しい古文書学的成果を生み出す手法を考案できた。その上でベルリン国立図書館からの疎開品で未知の敦煌吐魯番文書の存在の可能性が根強く指摘されていたポーランドのクラクフ市立図書館を調査した。担当司書の協力を得ることができ、漢文文献の全てを出納したが、ベルリン国立図書館からの大蔵経を初めとした大量の疎開文献の存在を確認したものの、敦煌吐魯番文書については存在しないという結論を得ることができた。 ついでヘルシンキ国立図書館の調査に入った。ここでも出納責任者の方と緊密な協力関係を築くことに成功し、実施困難であるとも一部で指摘されていた、マンネルヘイムコレクションの漢文断簡全点写真撮影を許可され、高精度デジタルカメラでの撮影に入った。約半数の撮影を終了し、それらについて内容の具体的分析に入った。その結果、ヘルシンキのマンネルヘイム・コレクションの断片が、旅順の吐魯番文書コレクションと直接接続する例が、少なくとも2点は存在することが確認できた((FM27-4+LM20_1496_01_O8、FM58A-5+LM20_456_03_6)。これはこれまで全く知られていなかった事実である。断片接続を発見する方法として、大蔵経デジタルテキストの活用が有効であるという仮説も証明できた。以後、この方法で研究を続けていきたい。さらにコペンハーゲンの敦煌写経についても予備調査を終えることができた。購入品の真偽鑑定については重要な論点なので、今後さらに慎重に検討を進めていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膨大な漢籍を抱えていて難航が予想されたクラクフ問題に最終的決着をつけることができた。またベルリン・コレクションと日本の木簡を直接比較するという新しい古文書学的手法を創造できた。さらにヘルシンキのマンネルヘイムコレクション断簡の全点写真撮影に目途が立ち、それによって旅順との接続が確実になったことの意味は大きい。これは小断簡が大きくなる可能性を持つことを意味し、小断簡に新しい歴史学的生命を吹き込むことができた。断簡は大きくなればなるほど価値が増していくからである.
|
今後の研究の推進方策 |
ヘルシンキについては全点撮影が終わればさらに大きな成果が得られることが予想されるため、この早期の撮影完了を目指す。またここで得られた手法を、今後のイスタンブールやサンクト・ペテルブルクでの調査に活用していく道を切り開く。
|
次年度の研究費の使用計画 |
もしヘルシンキで写真撮影が可能になれば、膨大な時間が必要になることが予想されたので、旅費の一部を保留しておいた。今回、全点撮影の許可が下りたので、その再調査に利用することとしている。またベルリンやコペンハーゲンについても再調査が確実になってきたので、その旅費に充当することとした。
|