本研究は、唐代における入唐僧の活動の実態、および当該期の地域社会や交通路の復元をおこなうことで、東アジア地域における仏教交流の実態を解明することを目的とする。 本年度は、2014年12月24~29日の6日間、中華人民共和国陝西省渭南市・西安市臨潼区において、入唐僧円仁の巡礼行程調査を実施した。現地では文物局や古老への聞き込み、および衛星写真を活用することで、円仁が通ったであろう五臺山―長安を結ぶ交通路の痕跡を確認し、GPSデータとして記録した。特に渭南市大茘県から渭南市街へ向かうルートでは、「駅」の遺称地名とそこから西安へ向かって延びる直線道を確認することができた。円仁が書き残した旅行記『入唐求法巡礼行記』の記述におおよそ合致するルートを復元できたが、このルートは長安への行程としては遠回りであり、なぜ円仁がこのような行程をとったのか、疑問も残った。これらの道路が円仁の通過した9世紀中頃まで遡り得るのかについては、古地図・地誌等から改めて考証する必要がある。なお本年度調査を以て、円仁が日本を出発してから長安に到るまでの往路について、ほぼ全地域の調査を完了した。 また2015年1月25日には、國學院大學において日本・中国・韓国3ヵ国の研究者による国際シンポジウムを開催し、平成24~26年度の研究成果を公表した。これにより、各国の最新の研究状況を確認するとともに、国内外の研究者との学術交流をもおこなうことができた。シンポジウムの成果については、論文集として刊行することを計画している。
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