研究課題/領域番号 |
24401030
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
浦野 聡 立教大学, 文学部, 教授 (60211778)
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研究分担者 |
深津 行徳 立教大学, 文学部, 教授 (70208916)
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10296329)
太記 祐一 福岡大学, 工学部, 教授 (10320277)
草生 久嗣 大阪市立大学, 文学研究科, 講師 (10614472)
中谷 功治 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217749)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ビザンツ / 柱頭 / イコノスタシス / 聖堂 / 聖域 / 都市遺跡 / 司教座 / フレスコ |
研究概要 |
7月から8月にかけて発掘を行い、身廊部、祭壇部、後陣部、南側廊部に堆積した表土を西側入り口から順にアプシス部に向け、聖堂床面から10~20cmの上のレベルまで除去した。南側廊部では壁体倒壊の恐れがある南翼廊部との交差部手前で表土除去を止めた。発掘停止レベルは、聖堂遺構使用の最終フェーズにある簡素な墓のレベルであると同時に、側廊と身廊を繋ぐ通路の敷居レベルでもあり、その上から有意の生活痕は認められなかった。身廊部中央からは説教壇の礎石と、欄干部材断片を見いだした。また、身廊部主部と祭壇部(内陣)を分かったと思われるスタイロベイト状の敷石列の上に、6本に復元される柱体とその上を飾る柱頭(ビザンツ式4点、イオニア式1点他)が集中的に倒壊しているのを見いだした。柱頭のうちビザンツ式のものは、身廊躯体を支える円柱の上を飾ったコリント式柱頭を改変した物との知見を得た。すなわち、改築・修築時の製作で、おそらくビザンツ中期に聖堂が祭壇部に限定して再建された時のものと考えられる。その上に乗っていたと考えられるアーキトレーヴは、近隣のクサントス司教座聖堂のイコノスタシスのそれらと共通の意匠を持つ断片を多数発見した。クサントスと同じ工房の手になるなら、これらは10~11世紀のものと考えられる。このほか、5・6世紀の円環・十字架文浮彫を持つ二件のパネルの裏にビザンツ中期の鳥獣・帯状装飾文浮彫が刻まれているのも見いだした。これらも再建時の作であろう。さらに、祭壇部と南翼廊部を完全に分かつフレスコを施された腰高壁体の存在も確認した。アプシス部のシントロノンは北半分で深刻な破壊の痕跡が見られた。 その後、舗床モザイクまでのトレンチを入れ、モザイク保存の技術を試験的に適用した。 8月後半に小アジア中西部の聖堂・聖域遺跡の調査を行った。帰国後、秋に図面を作成し、発掘の成果は1月末までに中間報告にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
南翼廊部の発掘を妨げている傾いた壁体は、発掘開始時までにトルコ政府の許可を得て修復する計画であったが、許可と資金が得られなかった。ただ、発掘終了後に、クレーンを導入し、発掘部材の搬出を行うとともに、危険な壁体構成部材を壁から取り外すことができたので、次年度に向けて発掘の環境は整った。
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今後の研究の推進方策 |
13年度は、祭壇部や北翼廊・北身廊部などでモザイク床面の発掘を行う計画だが、並行して南翼廊部の発掘も進めるので、遅れは取り戻せるものと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
13年度は、瓦礫除去発掘費用の他に、モザイク発掘・保存のための費用が必要になる。保存の専門家を招きノウハウを伝授してもらうための経費に充てるため、前年度の基金分から63万円弱を使い残した。レンタカー代や宿泊・食費が必要なのは、前年度と変わらない。
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