研究課題
2016年8月、聖堂床面全域について、その発掘を完了した。未発掘であった北側廊から北翼廊にかけてのモザイク床面は保存状態も比較的よく、幾何学文様の4種類のカーペットが連続しておかれているのが確認された。身廊部のモザイク床面は、この聖堂のモザイクの精華といってもよい、3つの正方形からなる、動物文、植物文、幾何学文を組み合わせたカーペットが、たいへんよい保存状態で発掘された。それに対し、南側廊から南翼廊にかけての部分は、後代(おそらく中期ビザンツ時代)に床下に墓が19基作られたこともあり、保存状態は劣悪で、わずかな残存部から、北側廊・北翼廊にかけてと同じコンセプトで幾何学文の連続からなるカーペットがデザインされていたことが知られるのみであった。これらのモザイクは、近隣のクサントス東聖堂のモザイクとの比較や出土貨幣の情報等から、5世紀半ばの制作と考えられ、聖堂の創建年代を示しているものと考えられる。このことは、クサントス河谷におけるキリスト教の定着過程を明らかにする上で、きわめて重要な成果である。このほか、本年度は、出土動物骨の調査も行い、身廊部からの動物骨の出土がほとんどないことが確認された。このことは、第三期、11世紀における聖堂再建時に、南翼廊が作業員の休息場所にされる一方、身廊部が作業を実際に行う場であり、かつそこに再建後の聖堂の主要設備を備える場であったためと考えられる。中世のこの地域の人々の、聖域に対する考え方の一端を垣間見せる成果と評価しうる。さらに、南側廊から南翼廊にかけてみつかった19基の墓(そのうち1基は2013年に発掘済み)には、1体から3体までの人骨が葬られていたが、ハーバード大学に送って、現在、DNA調査を行っている。これらの人骨の多くは、聖堂がいったん放棄されていた時期(7世紀から10世紀)にかけてのものと、聖堂の最終放棄後のものがあると想定される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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