研究課題/領域番号 |
24401031
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川西 宏幸 筑波大学, 名誉教授 (70132800)
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研究分担者 |
周藤 芳幸 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (70252202)
堀 賀貴 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20294655)
内田 杉彦 明倫短期大学, 歯科技工士学科, 准教授 (00211772)
辻村 純代 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 研究員 (60183480)
津本 英利 (財)古代オリエント博物館, 研究部, 研究員 (40553045)
花坂 哲 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (70512870)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 考古学 / 文化遺産救済 / 3D測量 / 記録保存 / 都市研究 / 地域研究 / 国際研究者交流 / エジプト |
研究概要 |
平成25年7月2日に本研究代表者の川西宏幸が日本を発って翌日カイロに到着。7月4日にエジプト考古局を訪れ、調査の許可を得た。しかし、政情不安と暴動の勃発によって本年度の現地調査は延期を余儀なくされた。 このような予想外の事態に遭遇して、本年度の調査研究は所期の目的を達成することができなかった。現地調査の延期を受けて、8月6日に分担者による緊急ミーティングを開き、本年度研究計画のスケルトンを策定した。そこで、関連テーマを軸としたデータ収集と机上の研究活動を行うことに徹した。その成果が平成26年3月15、16日に名古屋大学で行った公開シンポジウムで発表され、討議が重ねられた。 すなわち、周藤芳幸の銘辞班が、アコリスでのプトレマイオス朝採石場址の調査結果に基づいて、同朝下での政情が地中海世界と連動していることを論じ、堀賀貴の測量班がイタリアのオスティアでの3D測量調査事例をアコリスのモデルとして示した。また考古班でも、辻村純代が女性・幼児埋葬を取り上げて第3中間期の都市社会を、花坂哲がエスノアーケオロジーの観点からアコリスの皮革工房址を検討して同期における手工業生産をそれぞれ問題にした。さらに、考古班の協力者・高橋徹が第3中間期からコプト時代までの2000年近い長期の土器編年を精細に組み上げた。都市の長期的変遷を復原しようとする本研究にとっては、まことに時空を得た成果であったといえる。その他外部の招聘スピーカーによって、第3中間期のアコリスに殷賑をもたらせたレヴァンとの交易活動が出土土器によって具象化され、あるいは、プトレマイオス朝と兄弟関係にある西アジアのセレウコス朝の政治動向について知見を広げ深めることができた。これらの研究成果は、一部が平成26年6月刊行予定の調査概報(英文)に論文として掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度のエジプト現地調査が、政情不安と暴動の発生によって、遂行できなかった。これが遅滞原因のすべてである。ただ、机上でのデータ収集と研究活動については、本研究の骨子のひとつである古代エジプトの集落研究の推進が、所期以上の成果を上げつつあり、もうひとつの骨子である3D測量による集落遺跡の緊急避難的救済も、机上でモデルを組み上げ、現地調査再開への準備を整えることができた。これらの点では進展がみられる。
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今後の研究の推進方策 |
エジプトからの情報によると、政情不安はほぼ鎮まり、暴動の発生も散発的である。諸外国の調査隊はすでに現地入りして、調査を再開している。これらの点から判断すると、平成26年度夏季に予定している我われの現地調査は、今後再び重大事が勃発して治安が悪化しない限り、着手が可能である。26年度の現地調査実施計画は、中止を余儀なくされた前年度調査を引きつぐ予定である。ただ、前年度調査予定分を本年度に上乗せすることは、最大3ヶ月に及ぶ調査期間の大幅な延長を伴うため、調査従事者の身分を考えると現実的な方策ではない。したがって、延長は若干にとどまる。
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次年度の研究費の使用計画 |
エジプト国内の政情不安と暴動の発生によって、平成25年度現地調査が中止になったことにより、渡航・滞在費、人件費・謝金として計上していた予算が、現地に赴いた本研究代表者の川西宏幸の渡航・滞在費を除いて、26年度に繰り越されている。 前年度までに未使用だった研究費は、平成26年度の現地調査関連予算とあわせて執行する予定である。ただ、2ヶ年の関連予算をいっきょに執行するのは、調査期間の大幅な延長を余儀なくされるので、実際には難しい。そのため、一部の次年度繰り越しが避けられない見通しである。なお、国内執行の諸予算については、執行上の問題はない。
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