研究課題/領域番号 |
24401034
|
研究機関 | ノートルダム清心女子大学 |
研究代表者 |
紺谷 亮一 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (50441473)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | キュルテペ遺跡 / KAYAP / ユネスコ世界文化遺産 / イキテペ遺跡 / スズ / セニルスルトゥ遺跡 |
研究実績の概要 |
2008年から開始したトルコ共和国カイセリ県遺跡調査プロジェクト(KAYAP)は2014年をもって一区切りとした。計7年の調査でカイセリ県のほぼ全域を踏査し、計124か所のテペ(遺丘)を踏査した。2014年度は各遺跡の座標、簡易測量、表面採集資料等、すべてのデータを整理し、調査報告書を出版する為の準備をおこなった。具体的には2014年には特に表面採集した土器片約6000点のうちから報告用の約1500点を実測及びデジタルトレース作業を終了することができた。研究業績の主なものとしては2008年~2012年の調査データを基に①前期青銅器時代からローマ時代にかけてのセトルメントパターンの変遷、②アッシリアコロニー時代(前2千年紀前半)の新たな交易ルートの提唱、③アッシリアコロニー時代の巨大都市であるイキテペ遺跡の発見、④古代スズ鉱山及び工房址であるセニル・スルトゥ遺跡及びテクネカヤ遺跡の化学分析、詳細な測量調査を行った。 特に我々によるセニル・スルトゥ遺跡の調査は西アジア考古学界に大きなインパクトを与えた。セニル・スルトゥ遺跡において古代鉱山抗を確認され、表面に露出した岩石にヤズガニッドと呼ばれる自然銅に純度の高いスズが含まれた鉱物であることが分析結果から明らかになった。さらにセニル・スルトゥ頂上部にはアッシリアコロニー時代よりもさらに古い前期青銅器時代の居住址を確認した。これらのことから中央アナトリアでは既に前期青銅器時代(少なくとも4300年前)からスズを駆使して青銅生産を行っていた可能性が高くなった。 我々の調査対象であるキュルテペ遺跡が、1948年から今日までの継続した調査、計2万枚に及ぶ粘土板文書の発見、アッシリアコロニー時代におけるオリエントにおける大交易網の提唱等の成果により、2014年4月にユネスコ世界文化遺産暫定リストに登録された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カイセリ県内の遺跡分布調査(計124遺跡)に区切りをつけることができた。各時代における遺跡のセトルメントパターンをキュルテペ編年に基づきながら抽出することができた。特にGISによる地形データとセトルメントパターンを融合させ、キュルテペからタウルス山脈を越えて地中海にいたる新たな交易ルートを提唱した。これは学界内で高い評価を得た。また、遺跡分布調査報告書出版のメドがたった。
|
今後の研究の推進方策 |
1)遺跡分布調査報告書出版を目指す。 2)キュルテペ遺跡で未だ確認されていない、前期青銅器時代以前の銅石器時代編年(前4千年紀)を確立する。この為にはキュルテペ遺跡の最深部を発掘する必要があり、遺跡北斜面をターゲットにして2015年夏から発掘するする予定である。銅石器時代はオリエント考古学において先史時代から歴史時代へのの転換点である。つまり「都市の起源」に関わる重要な時代である。 残念ながら科研の新申請が獲得できなかった。再度、科研に応募すると共に、所財団の研究費獲得に積極的に関わっていきたい。そして銅石器時代層の発掘を継続的なプロジェクトにしていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2014年度にキュルテペ遺跡北辺部に編年用のトレンチを発掘し、あわせて出土遺構を写真測量する予定であったが、トルコ政府考古局による発掘許可が2015年度からになったため、既に購入予定の撮影・測量機材購入分の未使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
このため、遺跡北辺部の発掘を次年度に行うこととし、次年度使用額はその経費に充てることにしたい。
|