トルコ共和国カイセリ県遺跡調査プロジェクト(KAYAP)は2014年をもって一区切りとした。計7年の調査でカイセリ県のほぼ全域を踏査し、計124か所のテペ(遺丘)を踏査した。その中で、銅石器時代(紀元前3000年以前、メソポタミアではウルク期)と思われる遺跡を22か所確認した。KAYAPにおいて表採した土器片を放射性炭素年代測定法で分析したところ、紀元前3000年以前に位置づけられるものが確認されたことが、その根拠の一つである。調査対象地域であるカイセリ県では、銅石器時代は未だ考古学的に調査されていない。 そこで、Fikri Kulakoglu氏(キュルテペ遺跡発掘隊長、アンカラ大学教授)の協力を得て、最終年の平成27年度から、当地域最大の古代都市であるキュルテペ遺跡の北トレンチで銅石器時代の文化層を確認する発掘作業に入った。この発掘調査では、銅石器時代直前にあたる前期青銅器時代前半の文化層に到達した。出土遺物としては大理石製偶像(神殿や宮殿以外でも同様の偶像崇拝が一般的に行われていることを突き止めた。また、偶像にはアスファルトの痕跡があり、恣意的に壊した後に、あらためて接着してことがうかがえる)、大量のロクロ製皿(考古学上、アナトリアでは紀元前2000年頃にロクロ製土器が用いられたとされているが、その概念を覆す結果である)、シリアンボトル、デパス(トロイ遺跡で命名された両把手付壺)、カナアンブレイド(今日のパレスチナ地域を含む東地中海岸で多く生産されたとされる石刃)等が確認された。これらの出土遺物は、キュルテペが前期青銅器時代においてもシリア、メソポタミア地域と強い結び付を持っていたことを示す。
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