研究課題/領域番号 |
24401038
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
王 柯 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80283852)
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研究分担者 |
王 維 長崎大学, その他部局等, 教授 (10322546)
潘 宏立 京都文教大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20321060)
山田 勅之 大阪成蹊短期大学, その他部局等, 准教授 (40582995)
石原 享一 北海商科大学, 商学部, 教授 (60283850)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ムスリム / 宗族組織 / 族譜 / 漢化 / 科挙制度 |
研究実績の概要 |
王柯は香港中文大学、台湾国家図書館、中央研究院の民族研究所、歴史言語研究所などにてムスリム社会の宗族化と科挙試験への参加との関係、科挙試験への参加と漢化との関係について調査を実施、山田勅之は8月と12月に二回にわたって雲南省麗江にて東巴文化研究院と麗江博物院にてナシ族の家譜について調査した。王維は福建省の陳鎮鎮回族村と百崎回族郷白奇村にてムスリム宗族の祭祀と音楽活動に焦点を当てて、二つの側面から現地調査を行った。1、福建省にある伝統的音楽―南音、特に南音組織―南音社についての調査。2,白奇回族鄕のムスリム宗族郭姓の宗廟における春の祖先祭祀―「春祭」についての調査。潘宏立は福建省において族譜の再編、族長および長老組織についてフールドワーク調査を実施した。 8月に札幌北海商科大学にてワークショップを開き、王柯は「周縁と中心――中国イスラム宗族研究の手がかりとして」と題する報告を発表し、研究者分担者全員がこれについて討議し、ムスリム宗族研究の方法論問題について話し合いをした。11月に中国から学者を招聘し、神戸大学にて国際シンポジウム「中国南部地域のムスリム宗族の成立と発展」を開き、王柯が「中国南方ムスリムの宗族形成と科挙参加――百寿堂『沙氏族譜』を例に」、山田勅之が「木氏族譜はどうしてできたのか―中国ムスリムとの比較」、海外研究協力者方素梅(中国社会科学院民族学与人類学研究所)は「宗族、宗教と郷村社会治理――広西桂林市草坪回族鄕潜経村の考察」、研究協力者馬京(雲南大学)は「雲南回族宗族の形成と族譜作成」を発表した。 研究成果の一部は、次の著作に反映した。1,王柯、『中国、従天下到民族国家』(中国、天下から民族国家へ)、台湾政治大学出版社、2014年6月、総293頁。2,王維『華僑的社会空間与文化符号』(『華僑の社会空間と文化記号』、中国中山大学出版社、2014年8月、総376頁。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、多くの回族宗族を調査し、複数の未公刊の宗族資料を発見した。その一部はすでに二冊の研究資料集(『中国江西省九江市都昌県「馬氏宗譜・巻首」』と『桂林回族宗族資料』)に編集された。さらにこれまでの調査と研究の成果に基づいて、王柯の「周縁と中心――中国イスラム宗族研究の手がかりとして」が象徴しているように、研究グループはすでに8月のワークショップで研究の意義と方法論における学術の発展に対する貢献について議論をはじめ、研究の集大成に向けて着々と進んでいる。さらに11月26日から27日までの国際シンポジウム「中国南部地域のムスリム宗族の成立と発展」において、複数の研究分担者と研究協力者は論文を発表、提出した(王柯「中国南方ムスリムの宗族形成と科挙参加――百寿堂『毗陵沙氏族譜』を例に」、山田勅之「木氏族譜はどうしてできたのか―中国ムスリムとの比較」、海外研究協力者方素梅(中国社会科学院民族学与人類学研究所)「宗族、宗教と郷村社会治理――広西桂林市草坪回族鄕潜経村の考察」、研究協力者馬京(雲南大学)「雲南回族宗族の形成と族譜作成」)。また、王柯『中国、従天下到民族国家』(『中国、天下から民族国家へ』、台湾政治大学出版社、2014年6月、総293頁)、王維『華僑的社会空間与文化符号』(『華僑の社会空間と文化記号』、中国中山大学出版社、2014年8月、総376頁。)のように、この研究で得た知見はすでに様々な研究に反映しはじめた。以上のように、この研究が中国における多文化社会形成回路の究明を目指すという当初の目標を計画通りに達成できると思う。
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今後の研究の推進方策 |
これまで調査出来なかった地域において引き続き回族社会の宗族制度と伝統などについてフールドワーク調査を実施し、その上でまず日本において海外から研究協力者を招聘し研究集会を開き、ムスリム社会の宗族化と科挙試験への参加との関係、科挙試験への参加と漢化との関係について調査・研究し、それを通じて回族にとっての「宗族」の意義、ムスリム宗族の構成原理と特徴、ムスリム社会の宗族化と科挙試験への参加との関係、科挙試験への参加と漢化との関係、地域社会および地域文化とムスリム宗族と関係、宗族と民族伝統との関係、宗族内部における共有財産の成立と変遷の原因、回族族譜編集の原則、祖先に関する伝承の生成、宗族分枝の原則、族譜の宗族に対する意義、などを検証し、概ねに把握した。それによって、ムスリム社会における宗族が形成する社会的な背景及び地域との連動性を分析し、漢族やほかの少数民族の宗族組織と共通性と相違点を明らかにし、組織の連携を図りながらムスリム宗族研究のモデル化と研究の集大成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の集大成を目指して、複数の海外調査を実施し、シンポジウムを開催する。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の集大成を目指して、研究分担者全員は海外研究協力者の同伴で引き続き海外調査を実施する。 香港中文大学、中国南京大学、北京大学、厦門大学、台湾政治大学、中央研究院近代史研究所などの海外研究機関から中国ムスリム宗族の研究者を招聘し、11月に大規模な研究集会を開く予定。
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