本年度は、ペルー・クスコ市に所在するマチュピチュ博物館とリマ市のペルー日本協会ギャラリーで延べ70日間、「日本人によるペルー人類学 回顧と展望」(La antropologia peruana por los japoneses Retrospeccion y Perspectiva)と題し、申請者らがデータベース化した「アンデス民族画像コレクション」から30枚を厳選し展覧会として公開した。これは、自文化が写し込まれた民族誌画像を被写体となる側の人々がどのように見るかを検討するものであると同時に、日本人によるアンデス人類学がどのような変遷を辿ったかを画像によって跡付け、それをさらに国際的な研究動向と対応させて、日本人の手による研究の独自性を垣間見ようとするものであった。また、別項にも記したように、その際リマの会場では、報告者ならびに研究協力者で、講演会を開催した。今回の展示は、あくまでも予備的な試みであり、被写体となっている地域の人々を観客と想定していなかったが、偶然のもこの展覧会と講演に、展示の写真に写しだされた人々の親族がおられ、こうした試みが好意的に受け入れられることが分かった。しかも、展示した写真は、1980年代から始まるテロ活動の中心地アヤクーチョの1960年代前半のものであり、反政府テロ組織により徹底的に破壊された地域の以前の姿を再現できる貴重な史料であることも判明した。また、以上の試みとは別に、クスコ、ピウラ、ワンチャコの儀礼、祭典、漁労の写真と民族誌の関係を検討し、画像と民族誌との組み合わせから「分厚い記述」を引き出す可能性を模索した。
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