研究課題
本研究の目的は、チタルム川流域を対象として、農業用水の節水ポテンシャルを定量的に評価し、都市から農村への節水に対する補償(環境サービス支払い)の可能性を検討するものである。平成25年度はチタルム川における農業用水需要、家計調査、及び環境サービス支払い制度等について、調査・分析をした。主な成果を以下に記す。第1に、農業用水の需要に関してはサブグループ①からサブグループ③のシミュレーション分析の結果、チタルム川流域では、灌漑設備を整備すれば、3期作が可能な程度の水資源量があることが分かった。現在の作付け回数は流域全体では2.1回と見込まれている。また、米消費量は2050年までに10%程度増加する可能性があるが、高収穫品種の導入と施肥量を増やすことで、農業用水需要を増加させずに、将来の米需要を満たすことができることが明らかになった。第2に、農家の家計調査については、中流域の西ジャワ州チアンジュール県シンダンジャヤ村と上流部に位置する西ジャワ州西バンドン県スンテンジャヤ村で家計調査を行った。両地域に共通した傾向は、教育等の問題で、都市部および農村部における農外就業についても、インフォーマルセクターにおける不安定な就業が大部分を占め、住民は脆弱な生計状態に置かれていることが明らかになった。第3に、現在行われている環境サービス支払い制度については、スンテンジャヤ村について、環境サービス支払い制度に参加している住民とそうでない住民の間にどのような差があるかを調査した。スンテンジャヤ村では土壌流出抑制を目的として通常の栽培からアグロ・フォレストリーに転換する費用の一部を下流の水道事業者が農民へ補助する、PESが実験的に行われている。調査の結果、比較的耕作面積の大きな農家が本事業に参加していることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
水資源モデル、作物成長モデルは、現状を再現できるレベルである。加えて、農家の家計調査及び環境サービス支払い制度の現状に関する調査も、概ね計画どおり進んでいる。
計画に沿って進める予定である。
使用額に差が生じた主な原因は、環境サービス支払い制度の状況に関する調査について、当初予定していたよりも安く済ますことができたためである。具体的には、現地のカウンターパートのはからいで、アンケート調査を各戸訪問ではなく、アンケート対象者を村長の家に招いて行うことができたため、調査日数が当初予定していたよりも少なくすることができたことなどが影響している。研究成果を英文の学術誌に投稿すべく、英文校正などに使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)
土木学会論文集B1(水工学)
巻: 70(4) ページ: I_277-282
Proc. the 7th Asian Crop Science Conference. Improving Food, Energy and Environment with Better Crops
巻: 7 ページ: 96-100