研究課題/領域番号 |
24402006
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
長嶋 俊介 鹿児島大学, 国際島嶼教育研究センター, 教授 (10164419)
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研究分担者 |
野田 伸一 鹿児島大学, 国際島嶼教育研究センター, 教授 (60112439)
西村 知 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (20253388)
川西 基博 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (50551082)
山本 宗立 鹿児島大学, 国際島嶼教育研究センター, 准教授 (20528989)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 公衆衛生 / 社会的関係資本 / 持続可能的発展 / デング熱 / ライフスタイル / ガバナンス / 衛生昆虫 / 移入食料容器 |
研究概要 |
学術的成果では8件発表(以下発表日時順)。①『ミクロネシア ピス島・ピンゲラップ島・モキール島における社会的関係資本について』太平洋諸島学会。②『ミクロネシア連邦チューク環礁における有用植物および食事に関する調査』日本熱帯生態学会。③『Food security on Chuuk Atoll, Federated States of Micronesia』International Small Island Cultures Conference。④『Impact of Migration on Land Use of Cyrtosperma merkusii plantation: A Case study of an Atoll in Federated States of Micronesia』International Small Island Cultures Conference。⑤『Food Security and Crop Diversity in Micronesia』East Asian Island and Ocean Forum。⑥『太平洋島嶼国の離島における農地利用制度の変容:ミクロネシア連邦共和国ピンゲラップ島のイモ畑利用を事例として』進化経済学会。⑦『ミクロネシア連邦の小島社会におけるデング熱媒介蚊の対策2.蚊幼虫の駆除』日本衛生動物学会。⑧『ミクロネシア連邦ピンゲラップ島の居住地域における有用植物』日本熱帯農業学会。 その成果の実践的地域還元の詰めを、ワークショップ等で行った。地元の地域ルール作づくりへの意欲と要望を受けて、マレーシアにおける罰則規定を含む法律事例(Disease Bearing Insects Actとその関連論文等)を入手し、社会関係資本である支援的関係者組織を通して、配布した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
調査研究に関しては、かかる遠隔の小離島を対象にしたものとしては、訪問頻度が限られるのにもかかわらず、当初予定した以上の成果を着実に上げている。地元との協力体制が得られていること、調査後も関係者(島出身者ネットワーク=社会的関係資本)がかかわった頻繁なフォローが確保できていることにもよる。また調査メンバーの中に他業務で、調査地およびその近辺に訪問する機会があれば、補足的・補充的連絡を取り続けていることも功を奏している。 実践的地域還元に関しては、①自覚的ガバナビリティを育むことと、②その活動を支援する外部・内部資源=社会的関係資源の惜しみないサポート、そして③地方政府の行政的・専門知的サポート体制の確立とその有無が成否を規定する。①に関しては、調査活動でカウンターパートとなった人たちを通しての自覚的吸収が(本調査以前からもかかわり)回を増すごとに高まっている。地元からはペナルティを含むローカルルール作成を逆提案されている。そのサポート的情報提供も、島と結ぶ社会的関係資本(②)を通して行い、次段階に入った。③は本研究ではデング熱媒介蚊に関する調査成果をWHOに提供し、ワークショップも行い現地政府衛生行政にも即反映している。ピス島には、小型船で頻繁に州衛生局が訪問可能であるが、本研究の意図も理解して専門職的関与がより強化されつつある。みずからの地域力で衛生環境を構築できることを理想として掲げつつ、この3者相互作用にも目を向けた体制展望にまで来た。 当該対象地域の植生・食・経済の実態把握は着実な成果を今年度も上げた。サンプル把握のレベルから全域的・コーホート的・定量的把握としての全体性にまで近づきつつある。住民対象のデング熱説明会では、パンフレット配布やDVD上映などを行い、蚊対策の重要性を説明し、コミュニティー対策実施を促した。伝統知:淡水小魚利用、発生容器対策区実施を要請した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるので、一連の成果を集大成した成果物の地域還元を第一の柱とする。最終年度成果も含めて、英語文での冊子報告書をピス島・ピンゲラップ島、州政府、FSM政府(同日本大使館)に提出することを目指す。 第二の柱は、成果そのもののレベルである。地元の人が地元のことを最もよく知るといわれる水準を超えた、役立つ専門的知見がどれだけ示せるかである。今回調査の現在の達成水準からして、その目標に近い成果を残せそうなので、その十分条件的点検を行いながら最後の詰めを行う。そのためにも地域全体を網羅させながら漏れの点検と、「実践性」に結び付く示唆まで踏み込む必要がある。発生容器の形状・種類・分布状況の分析成果も最終段階を迎える。 第三の柱は、地元の主人公的・実践力補強策を残せるか否かである。ガバナビリティ・社会的関係資本のサポート力・公共セクターの専門家集団的関与体制の強化の「3本の矢」が、過去のおいて「公衆衛生」に関して具体的にどうであったのか(伝統統治から近代・伝統混在、そして脱伝統にまで推移してきた)、現在の課題は何なのか(その内容にも学際的なメスと総括をしておく必要がある)、そして将来においてどうありうるのかにまで踏み込んだ考察と示唆的な展望の提示が必要である。遠隔離島であるピンゲラップの情報社会的展開は、このほぼ10年の間大きな転換を経験している。しかし現金経済的な制約もあり、その導入は加速度的ではない。ピス島においても減少人口社会の中での持続可能性課題を同じように抱えつつ、衛生環境の改善を他の課題とともに同時並行的に改善していかざるを得ない。一意専心型モデルではない、解決策の提示こそ目指したい方向性である。そのためにも、現状植生のマッピングとフードセキュリティ・食習慣追跡や、蚊対策マニュアルや、生活水準・ライフスタイル改善とのドッキング的総括を目指しているのである。
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