研究課題/領域番号 |
24402008
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
若松 邦弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90302835)
|
研究分担者 |
山崎 幹根 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 教授 (30295373)
高安 健将 成蹊大学, 法学部, 教授 (90399783)
今井 貴子 (小関 貴子) 成蹊大学, 法学部, 教授 (60552859)
平石 耕 成蹊大学, 法学部, 准教授 (00507105)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 政治学 / 政治史 / イギリス政治 |
研究概要 |
第二年度の本年は、各アプローチの分析を細部に掘り下げる方向性において進めた。4月に本年度以降の研究方針と作業手順を組織内で確認した上で検討作業に着手、アプローチごとに資料収集と分析を実施した。その間、夏前に前年度の作業に基づく中間報告書をまとめ、9月には、来日した海外研究協力者1名を交え最新の関連研究動向について意見交換を行なった。年度後半には、各分析について研究組織内で議論するとともに、自由主義の新側面としての総合的な特徴を次年度以降に知見として提示する上で適切な方向性を検討した。主たる成果とその意義、重要性を各アプローチに沿う形で示すと以下のとおりである。 【思想史】19世紀末から20世紀前半にかけての政治的多元主義・ニューリベラリズムが、D. マーカンド、B. クリック、P. ハーストら中道左派とされる思想家の言説に与えている影響を検討した。 【国家構造】司法改革、中央地方関係改革、人権法の制定を主たる事例として、政治エリートに対する不信感と国家構造の改革の関係を検討した。 【福祉国家】2007/08年の金融危機、2011年の暴動という「危機」に着目し、1990年代以降に主要政党が行った社会政策全般にかかわる自由主義の再規定が、イギリス社会にいかなる変化をもたらしているのかを明らかにするとともに、そこから明らかになる主要政党間の政策デザインの収斂と分岐を分析した。 【分権政治】不均一な権限が移譲されている「領域」と連合王国の特質を理解するために、ユニオンという概念の複数性を歴史的に理解するとともに、ユニオニズムとナショナリズムの多様性と共通性に留意する必要性を明らかにした。 【政治社会】イングランドにおける政党支持再編の特徴を、地方政治を中心に拡大する新興政党の動向を中心に、その支持基盤、ならびに時系列的な変化に注目して分析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究作業自体に特記すべき遅れはなく順調に進展している。年度途中に、メンバーの各大学での学務担当責任者への就任が複数生じ、現地での直接の聴き取り・文献の探索に時間的な制約が生じたものの、関係作業については資料を日本に直接取り寄せる形で実施するオプションも検討していたため、年度途中からその形で作業を代替し、影響は最小限にとどめられた。また、年度後半にメンバーのなかから所属先派遣による海外長期出張が生じたが、出張先がイギリスであるため、長期の現地滞在によって、むしろ関係の作業については集中的な実施が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度の次年度は、本年度までの分析を前提に、それらを補完、深化させる方向性をとる。年度前半は前年までの作業を継続し、後半に三年間のとりまとめを行う。 1. 最初に(4月)、過年度の作業に基づき分析の考察を深める。研究代表者の統括により、本年度の成果を検証した上で、第三年度の研究戦略の細部を確定する。 2. 上記の作業を経た上で、5つのアプローチに沿った検討作業を、年度の序盤から中盤にかけて実施する。アプローチごとの担当は本年度と同じである。各作業は3年間の総合的な分析を念頭に、本年度までの作業を補完する形とする。作業過程では過年度同様、イギリスならびにその周辺諸国で文書資料の収集や聞き取りを行う。 3. 年度後半は、本研究の目的である、イギリスの自由主義伝統における1990年代以降の局面について総合的な解釈を深めるとの観点から、海外の研究協力者を交えた形で期間全体の各アプローチの分析を検証し、論文や口頭発表の形で成果の公表を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究は第二年度と第三年度に相対的に大きな資金を想定した申請であったものの、各年度の資金配分が初年度を最大とする形で決定されているため、研究遂行の合理性の観点から、後年度への繰り延べが毎年必然的に生じる資金構造である。この点で計画的に資金を繰り延べることが必要な形となっている。 なお上記のとおり、本年度は資料収集作業を現地にて十分に実施できなかったアプローチ、ならびに所属先派遣による現地長期出張があるため、次年度へは旅費を中心に繰り越しが加わっている。 次年度の序盤から中盤にかけ、本年度現地での資料収集に制約が生じたアプローチについて、その作業を集中的に実施する。なおその進行状況によっては、本来の分担を越え、他の研究組織メンバーが資料収集を補佐する可能性も想定している。
|