自動車販売について、アジアの新興市場と、成熟した市場を比較すると、次のような違いがあることが分かった。新興市場では、自動車ディーラーの販売員に対する雇用・報酬形態は、外部労働市場との連動性が高く、外部市場の賃金水準や最低賃金法の影響により、労働者は容易に移動する。販売技能の蓄積も少ないため、個人業績も低く、報酬も低い。このことがさらに離職率を高くする制度的補完性が働く。他方、成熟した市場経済では、販売員の定着率は高く、雇用は内部化され、内部昇進や技能の蓄積が行われる。そして短期的な報酬形態としての成果主義賃金制度と、長期的な報酬に関わる昇進制度とがインセンティブ装置として組み合わされている。
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