研究課題/領域番号 |
24402018
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
島村 靖治 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (50541637)
|
研究分担者 |
山田 浩之 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (40621751)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 医療保険制度 / 医療経済学 / 社会保障 / ベトナム |
研究実績の概要 |
平成26年度は、ベトナムの医療保険制度の概要を包括的にレビューし課題等を取りまとめた"Public Health Insurance in Vietnam towards Universal Coverage: Identifying the challenges, issues, and problems in its design and organizational practices"が国際的学術誌である Journal of International Healthの12月号に掲載された(松島・山田)。論文中では、医療保険制度加入の仕組み自体の複雑さのみならず制度持続性を脅かす過度な補助制度の問題、また制度自身が生み出しているインセンティブ構造の歪みといった問題を指摘、今後の独自収集されたデータを用いての分析にとっての有力な論点を提供している。次に、実際の医療現場においては、正式な医療報酬に追加しての支出(インフォーマルな出費)を求められるという問題が頻繁に生じている。医師や看護婦・窓口係への心付け等がこれに該当する。そこで、"Impacts of Bribery in Health Care in Vietnam"では、現地NGOがフランス政府援助団体と協力して収集した医療現場におけるインフォーマルな出費のデータ、ベトナム統計局が行ったVietnam Household Living Standard Survey (VHLSS)、 保健省が発行しているHealth Statistics Yearbookを用い、インフォーマルな出費と医療サービスに対する満足度・医療保険制度への加入の関係を分析、現在、国際的な開発経済学の学術誌に投稿中である(松島・山田)。更に、保健省からは、JICAベトナム事務所の協力を得て、毎年(2000-2012)のHealth Statistics Yearbookを入手した。そこからは省レベルの統計データが得られるため、省レベルのパネルデータを構築し、医療保険加入率の拡大と医療需給両面の反応に関する分析を行っている。現時点では、医療保険加入率の増加は医療需要を増加させたが医療の供給サイドが追い付いていないという結果が得られている(松島・山田・島村)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体の達成度に遅れが生じた主な理由は、現地における家計・医療施設調査の実施が遅れたためである。しかし、現地調査の実施時期に遅延はあったものの、第1回目の調査については平成26年1月にThua Thien Hue省における調査を完了。続いて、平成26年5月にはQuang Tri省での調査を実施。そして、平成26年8月には Khanh Hoa省における調査も終了した。この間、研究代表者は平成26年2月28日から5月18日の期間、ベトナム、フエに滞在し、現地調査の進捗状況をモニタリングした。また、平成26年8月は研究分担者の指導学生(博士後期課程)がフエに滞在し、Quang Tri省における現地調査のフォローアップを行った。こうした活動の結果として第1回目の調査はすべて終了し、現在、データクリーニングを行いつつ、分析の準備を進めているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は第1回目の現地調査から得られたデータを使い、更なる分析と論文の執筆を進めていく計画である。これまでセカンダリーデータを用い執筆してきた論文に加え、独自調査のデータ用いることでしか探求することのできない研究テーマにも取り組んでいく。そして、こうした作業と並行して第2回目の調査についても準備を進めていく。平成27年9月には再びフエを訪れ、カウンターパートであるフエ医科薬科大学のチームとの打ち合わせを行う予定である。その後、Thua Thien Hue省における調査を平成28年1月、Quang Tri省での調査を平成28年5月、Khanh Hoa省での調査を平成28年8月に実施する計画を立てている。なお、第2回目の調査準備過程において、第1回目の調査時の反省点を踏まえ、質問票の改定を行い、問題点の改善を図りたいと考えている。 本研究の最大の特徴は、第1回目の調査と第2回目の調査は同じ家計を調査対象としていることである。こうした調査設計により、第1回目の調査時には医療保険に加入していなかった家計が第2回目の調査までに新たに保険に加入することで、行動にどのような変化がおきるのかを分析することができるようになる。つまり、医療保険導入のインパクトを推計することが可能となる。これが本研究の最終目標である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
第1回目現地調査の終了に伴い、1年間の遅延はあったものの、予算執行は当初計画に追いついたことになる。繰越金16,078円は基金部分であり、次年度に繰り越すこととした。
|
次年度使用額の使用計画 |
来年度以降は当初計画に沿った予算執行を計画している。
|