研究課題/領域番号 |
24402025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 昭雄 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (90282706)
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研究分担者 |
高橋 塁 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (30453707)
宮田 敏之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (70309516)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コメ産業 / インドシナ / 経済史 / フードシステム / 世界米市場 |
研究実績の概要 |
髙橋昭雄は、2014年8月、ミャンマー中央乾燥地の灌漑稲作とパテイン郡の精米所の補足調査を行った。これまでの研究成果を含めた学会報告を、東南アジア学会関東例会と同学会全国大会で行った。また、パテイン精米所の研究成果を『東京大学東洋文化研究所紀要』で発表し、さらには村落調査の成果が『東南アジア歴史と文化(東南アジア学会誌)』で発表されることが決まっている。その他、フジサンケイビジネスアイ紙上で「飛び立つミャンマー:髙橋昭雄東大教授のミャンマー農村見聞録」も、昨年度に引き続き月1回のペースで連載している。 宮田敏之は、タイ稲作の新たな展開として、古来よりで栽培されてきたインディカ米よりも高値で取引されるジャポニカ米に注目し、2015年3月にタイ中央部ナコンサワン県におけるジャポニカ米栽培の取り組みについて調査した。①良質な種籾確保の困難さ、②除草、施肥、水管理など栽培指導の困難さ、③専用精米所がないための白米品質管理の困難さなどの課題を把握することができた。これらと並行して、タイの米国経済の現状について、インラック政権の籾米担保制度と2014年5月クーデタの関係というホットな課題についても取り組んだ。さらには、タイとシンガポール米貿易史について、シンガポールで資料調査をおこなった。 高橋塁は、2015年3月にベトナム中部クアンガイ省および南部ティエンザン省で稲作調査を行った。ベトナム中部の稲作については実態に関する情報は少なかったので、今回の調査で新しい知見が得られることが期待される。また、2012年度、2013年度にイギリスのダンディー大学等において19世紀後半から20世紀前半を中心とする精米技術関連の資料調査を行ったが、今年度は収集した資料を電子化する作業を行った。さらには、本科研費でこれまでに行った研究成果を含む博士論文を完成させ、2014年9月に一橋大学で博士(経済学)の学位を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者および分担者のインドシナでの現地調査は順調に進んでいる。だが、3国の米の生産、消費、輸出統計の整備については、今年度は3人とも現在の米生産と流通に関する調査に重点を置いたため、古い時代の統計に関してはあまり進んでいない。ただし、高橋塁がイギリスで収集した精米技術関連の資料については、本科研で取得した新資料として整備していく。 個人研究活動を発表する研究会を「インドシナ稲作研究会」と題して、今年度は5回催し、うち2回においては、海外貨物検査株式会社(OMIC)の取締役常務・食糧部長高本正樹氏に「OMICの歴史と概要(東南アジアのコメ流通を含む)」、同社コンサルタント部主席コンサルタント阿久津隆男氏に「タイ・ベトナム・ミャンマーのコメのポストハーベスト技術(収穫、乾燥、貯蔵、精米)」と題する講演を行って頂いた。本プロジェクトの目的のひとつに、外部の専門家を招いてインドシナ稲作に関する知見を深める、という項目があるが、これはその一環として行ったものである。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は4年プロジェクトの最終年度にあたるため、過去3年間に収集した諸データの突合せを行い、3か国の比較のために欠けているデータの補足と発見を試みる。 同時に髙橋昭雄はミャンマーのデルタ地帯、中央乾燥地帯、シャン丘陵で、宮田敏之は中部および東北タイで、高橋塁はメコンデルタおよび中部ベトナムで現地調査を行うとともに、関係省庁や研究機関等を訪問して、これまでに調べきれなかったこと、さらに調べなければならないこと、について補完と追加を行う。 さらに研究のまとめとして、学会でパネルを持って3人同時に報告する、東洋文化研究所の出版物で特集を組む等の方法によって、成果を公開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
髙橋昭雄は2015年初頭にミャンマーに出張する計画であったが、同時期に2か月間国際協力機構(JICA)の専門家として、ミャンマーに派遣されたために、その間の旅費が使用されなかった。また、また高橋塁が大学の公務のためベトナム出張期間を短縮せざるを得なかったために、その間の旅費が使用されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表、および研究分担者の出張期間で調整する。また、学会発表で地方に行く場合には、研究協力者に旅費や宿泊費を支払う。
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