研究課題/領域番号 |
24402028
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
鷲田 祐一 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (80521286)
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研究分担者 |
山下 裕子 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (90230432)
上原 渉 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (30515060)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 商学 / デザイン / 新興国 |
研究概要 |
平成25年度は、(1)北京および上海での日本人建築デザイナーの業務の観察調査と周辺取材の実施、(2)スウェーデンIKEA本部でのデザイン民主化の取材、(3)パリの大手出版社数社およびポンピドゥーセンター等でのモダニズムデザインとポストモダニズムデザインの取材と資料収集、(4)日本人デザイナー534サンプルへのウェブ調査、(5)ベトナム・ハノイ市での日本企業・日本製品の進出状況取材調査、の5つの活動を中心に調査研究を推進した。いずれも非常に効果的に実態把握をすることに成功し、当初の研究仮説の多くが検証された。 これら調査研究の成果とその分析結果は、(6)平成26年5月16日発売「デザインがイノベーションを伝える -- デザインの力を活かす新しい経営戦略の模索」(鷲田祐一著:有斐閣)に詳細に採録される。最終年度である平成26年度において学術書の刊行という具体的な成果に結びついたことは非常に意義深い。 また、(7)日本マーケティング学会「クリエイティブ産業とイノベーション研究会」(第一回報告会:2013年6月28日)(第二回報告会:2014年1月27日)(大会報告:2013年11月10日)の実施、(8)平成25年度一橋大学秋季公開講座「デザインがイノベーションのきっかけを生む」(2013年10月26日)などの公開講演等も実現し、幅広く研究成果を報告することができた。 なお、これらの研究成果は(9)『宣伝会議』(2013年12月号)「日本のクリエイティブ競争力を問う」においても紹介された。 以上のように、平成25年度は5つの調査活動と4つの成果報告発表の活動を実績として実現し、非常に充実した1年となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究仮説の大半が検証(デザインという要素は、国境を越えて別の社会にイノベーションを伝達することができるという仮説)され、多くの部分は支持され(デザインが国境を越えてイノベーションを伝達した事例やその仕組みが解明された)、一部は不支持と判断された(しかし日本のデザイナーの場合は、産業構造が違う国では十分に実力を発揮できない場合がある)。仮説の中で、支持された部分が明確化できたことによって、当初計画にはなかったパリでのポストモダニズムの考察、スウェーデンIKEA社への取材や、日本人デザイナーに対する量的調査なども追加的に実施できた。それらの成果として、日本のデザイン産業の歴史的な発生経緯や産業構造の深い把握、および日本のデザイン産業の今後への示唆などを十分に吟味・精緻化することができた。またそれらの示唆について、国内外の有識者と豊富に意見交換することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの検討成果を受けて、平成26年度は「デザイン産業の輸出が、国境を越えてイノベーションを伝搬する効果がある」とする仮説の検証に結論を出す。その結論の主要な部分は平成26年5月16日発売「デザインがイノベーションを伝える -- デザインの力を活かす新しい経営戦略の模索」(鷲田祐一著:有斐閣)に詳細に採録される。 仮説の主要な部分は支持されたので、本研究で明らかになったデザイン産業輸出のパターンを理論的フレームワークとして固め、さらにそのフレームワークを活かしてイノベーションを推進しようとする別の新興国企業や別の日本人デザイナーを募り(インドネシアとシンガポールに日本人デザイナーや建築家を紹介する雑誌企業や、タイに電気製品の輸出をする製造業企業のイノベーション推進組織に焦点を当てる)、フレームワークを実際に適用し、再現性の確認検証を試みる。 また同時進行で、さらなる成果発表を実施(日本マーケティング学会「クリエイティブ産業とイノベーション研究会」の継続、産業界での講演、米国Stanford大学d.schoolでの講演実施、学術誌への論文投稿など)し、仮説追試者の増加を促す。 なお仮設の一部が支持されなかったことを受け、その理由の検証のために、平成25年度に実施した日本人デザイナーへのウェブ調査と比較できる形で中国人と米国人のデザイナーへも同様のウェブ調査や、新興国発のアイデアを日本人デザイナーがどのように評価するのかといった実験調査などを実施し、反証仮説のフレームワーク構築を目指す。研究代表者の鷲田が主に調査実施・仮説検証・研究発表にあたり、上原は調査の補助と研究発表を担当、山下は有識者や事務塚との意見交換の補助を担当する。また適宜大学院生を研究補助員として活用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
中国での観察調査が、大学院生などの補助調査員を効果的に活用することで、当初想定よりも大幅に短時間で成功裏に完了することができたため。 ほぼ全額を仮説が一部不支持になった部分についての原因の探求のために、中国人デザイナーと米国人デザイナーへの比較ウェブ調査の実施に充てる。
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