研究課題/領域番号 |
24402035
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
松戸 庸子 南山大学, 外国語学部, 教授 (30183106)
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研究分担者 |
松戸 武彦 南山大学, 総合政策学部, 教授 (10165839)
浜本 篤史 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (80457928)
星野 昌裕 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00316150)
櫻井 次郎 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40362222)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 異議申し立て / 中国の政治意識アンケート調査 / 甕安事件 / 信訪/陳情 / 国際情報交換(中国、華南、重慶) / 開発事業 / 御母衣ダム / 三峡ダム |
研究概要 |
今年度は3班のうち1つの班の入替えが生じたため、実際上は2つの班が研究を進めた。 まず松戸班は華南の某市でのアンケート調査(テーマは「信訪を含む政治意識調査」でサンプリングを通じた農村392票、都市400票の有効回答を入手)を年度末になってようやく入手し、10年前との比較可能な貴重なデータ(10年前の調査は中国人研究者が独自に実施したもの)を確保した。データ解析は松戸武彦が主として実行しており、公開した2本の論文では主に10年前のデータの分析をして、このたび、年度末に入手したデータとの比較のためのいくつかの視点を洗い出す作業を行った。また同班は定性データも入手するために、本研究テーマである「異議申し立て」に属する集合行動の一種である甕安事件に関する現地調査を実施し、集団抗議事件と呼ばれるその事件のマクロ、ミクロな背景や事件の収拾における中国的特質、およびその危うさの分析を進めた。さらに北京では複数の信訪人や思想犯の被疑者(行政拘禁後に釈放)への聞き取り調査を実施し、そのデータの整理を行った(現在継続中)。 いま一つの研究班である浜本班は、発電ダムとしての御母衣ダム建設に対する住民運動に関するヒアリングの記録を公刊(著書欄参照のこと)したほか、「開発事業に伴う陳情行動の日中比較」の観点から、今年度は特に銅山開発に伴う煙害に対する住民の陳情行動に視点を当て、足尾銅山、別所銅山に関して現地調査と史資料収集を行った。さらにダム開発に伴う陳情行動について、小河内ダム、御母衣ダムについては史資料を収集し、中国のダムについては三峡ダム建設に伴う移転住民について現地調査を実施し、資料を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の補助金の大半を支出した松戸班の最重要課題は、中国現地でのアンケート調査の実施とデータ入手であった。 社会主義国での調査という特殊事情により相当程度の困難はあったものの、中国側研究協力者への委託調査という形でアンケート調査を実施し、委託費を支払い、その成果物(USBに入力された792サンプルの有効回答)も入手することができた。統計解析を担当する松戸武彦が中心となってデータ分析を進めている。また、分担研究者が1名離脱するという予期しない事態が発生したが、平成26年度より本格的に始動する別の分担研究者を補充することができた。上記の離脱者の発生によってうまれた研究費約100万円は、アンケート調査費用の高騰(急激な円安)で吸収することができた。松戸班では約14万円の繰越金は発生したが、3月末の中国での現地調査でほぼ支出済みである。また浜本班にもほぼ同額の残金が発生したが、来年度十分に支出可能である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるため、3つの班(松戸班、浜本班、櫻井班)がそれぞれ定量データ・定性データ史資料の収集を最大限度実施し、入手したデータを整理し、資料集のような形で公刊する。また、それらを活用した論文集(テーマは「陳情を含む異議申し立て」)の出版は再来年度を予定している。 以下はそれぞれの班の研究予定である: 松戸班の今後の作業は、①入手したアンケート調査(華南某市の都市と農村でのサンプリング調査)データの解析、②別途に中国人が独自に実施したアンケート調査データ(中国側研究協力者が、全国に散らばる学生の故郷で入手した別途のアンケート調査データで回答者はすべて信訪経験者である)の購入の交渉・入手と、その分析、③集合行動の現地調査及び信訪人へのヒアリングの継続を行う; 浜本班は日本と中国の巨大ダム(小河内ダムと三峡ダム)の史資料の収拾を行う; 櫻井班は環境問題に関する中国NPOなどへの複数回の度の現地ヒアリング調査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は松戸班141,859円、浜本班141,647円で、いずれも約14万円ほどの次年度繰越金が発生した。しかし松戸班はすでに3月末の中国現地調査で上記の全額を支出 し終わった。この様に海外出張による現地調査は本務校の各種業務責任を果たすために、長期休暇でしか使用できず、3月の年度末もその時期に当たり、会計年度上、年度内の処理が困難なために、事務手続き上で次年度への繰越処理がなされたに過ぎない。 また浜本班に関しては、次年度(最終年度でもある)の配分額が相対に少ないこともあって日中双方の巨大ダムの再調査費用に充当することにして、若干の未使用額を発生させた。 松戸班の次年度使用額は前年度(平成25年度)3月下旬の現地調査によりすべて使用し終わった。 浜本班では、次年度(平成26年度)の夏休みまでに日本国内のダム(小河内ダム)調査や、中国の三峡ダム調査及び現地の研究者との学術交流のために使用する予定である。
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